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ID番号 06472
事件名 給与並慰藉料等請求事件
いわゆる事件名 徳島県職員労働組合事件
争点
事案概要  県の出先機関に勤務する県職員らが、県庁中庭における職場集会に参加するために年休を申請し承認を受けたが、後日県知事によりその承認を取消され、当該時間の不就労を欠勤として取扱われ、給与・勤勉手当を減額されたので、減額分の金員の支払および慰藉料を請求した事件。(請求一部認容、一部棄却)。
参照法条 労働基準法11条,24条1項
民法505条
体系項目 賃金(民事) / 賃金の支払い原則 / 全額払・相殺
裁判年月日 1975年3月18日
裁判所名 徳島地
裁判形式 判決
事件番号 昭和46年 (行ウ) 9 
裁判結果 一部認容 一部棄却(控訴)
出典 労働民例集26巻2号180頁/時報779号113頁
審級関係 上告審/01416/最高二小/昭53.12. 8/昭和51年(行ツ)28号
評釈論文 林伸豪・労働法律旬報885号49頁
判決理由  〔賃金―賃金請求権と考課査定・昇給昇格〕
 勤務手当額の算出の前提となる成績率は一○○分の四○以上一○○分の九○以下の範囲内で、任命権者の裁量によって決定するものである(給与規則二八条)から、その決定のない限り勤勉手当についての確定債権は発生せずまた右決定を争うことは原則としてできないものと考えられる。しかし、期間率は給与規則で基準日における勤務期間に応じて具体的に定められており(二五条、二六条、別表第一)、任命権者には裁量の余地なく、各職員の勤務期間に応じて一義的機械的に右基準が適用されるだけであるから、昭和四四年一二月五日の支給日には、基準となる勤務期間に応じて原告らの勤勉手当請求権が確定債権として発生していたものであって、被告が適法な年次休暇の行使を欠勤扱いとした結果、期間率の適用に差異が生じ、そのため支給勤勉手当に減額が生じたときには、右減額は違法であるから、原告らはその減額分を直接被告に対して請求できるといわねばならない。
〔年休―年休権の法的性質〕
 労基法三九条が一般職の地方公務員に適用されることは、地公法五八条三項により明らかである。したがって原告ら地方公務員の年次休暇の成立要件として労働者による「休暇の請求」やこれに対する使用者(任命権者)の「承認」という概念を入れる余地はない。被告県の休暇条例六条三項、四項、八条、休暇規則四条一項別表一、五条によれば、被告県の職員が年次休暇を受けようとするときは、あらかじめ任命権者の承認を得なければならないと定められているが、条例及び規則は法律の下級規範たる性質をもつものであるから、労基法の規定に反する内容を定めてもこれは無効であるから、仮に右承認規定が文字通り承認がなければ年次休暇は成立しないとしか解釈できないときは無効といわざるを得ない。したがって右規定は年次休暇をとる場合には任命権者に手続として届出をなすことを要する乃至は任命権者に時季変更権のあることを改めて規定したにすぎないと限定的に解釈すべきである。地方公共団体が年次休暇に承認制を設けるのは、国家公務員に承認制が採用され(国家公務員法一六条、人事院規則一五-六)、これと「権衡を失しないように」配慮したものと思われるが(地公法二四条五項)、法文上は国家公務員には労基法の適用が認められていないのであるから「権衡」を考慮する必要はない(なお、国家公務員についても、その承認は労基法三九条の趣旨に則り覊束された承認と解すべきであろう。)。                       〔年休―時季変更権〕
 年休権行使の許否を判断する単位としての事業場概念を考える場合は、その職場において相関連して一体をなす労働の態様が他の職場に対し一応の独自性をもつか否かを考慮すべきであり、事業目的の独立性、場所及び建物の独立、事務処理能力、職員数などの諸要素を総合して判断すべきであるが、前記認定のとおり原告らの各所属部署の所在場所及び建物は本庁から分離独立しており、その事業目的に一応の独自性が存在すること、年次休暇の承認(時季変更権不行使の意思表明)は、当該事業場の「事業の平常な運営を妨げる」か否かの観点からなされることは、労基法三九条により明らかであるところ、原告らの任命権者である県知事は各所属長に年次休暇の承認の権限を委託していることを総合すれば、本庁と原告らの各所属部署とは別個の事業場であると認めるのが相当である。
 (三) したがって一一・一三ストは本庁業務を阻害したにとどまり、原告ら所属の各事業場の業務を阻害したことにはあたらない。
 (中 略)
 年次休暇の利用方法の問題は年次休暇制とは別の次元においてその違法合法を検討すれば足りるのであって、年次休暇を違法な行為に利用したことにより、懲戒若しくは刑罰等の対象として問疑される場合のあることは別個の問題で、年次休暇の成否に何ら影響するところがない。
 4 右のとおり、原告らが年次休暇を利用して本庁における一一・一三ストに参加したことは、当日の原告らの年次休暇の成立を妨げるものではない。したがって、県知事が、争議行為への利用を理由に原告らの右年次休暇の一部を欠勤扱いし、給与を減額して支給し、本来適用されるべき期間率より低い期間率をもって計算して勤勉手当を支給した行為は違法であり、右減額及び差額分の給与等の支払並びにこれに対する弁済期後で訴状送達の翌日であることが記録上明らかな昭和四六年一一月七日から支払いずみまで民事法定利率年五分の割合による遅延損害金の支払を求める原告らの請求は理由がある。