全 情 報

ID番号 06499
事件名 地位保全等仮処分命令申立事件
いわゆる事件名 大阪市交通局協力会事件
争点
事案概要  就業規則で第一種職員と第二種職員が明確に区分され、定年年齢も前者が六五歳、後者が六〇歳とされていたにもかかわらず、第一種職員である女子を第二種職員と呼称を変更し、第二種職員の定年を適用し六〇歳で定年解雇したことにつき、解雇された女子従業員が地位保全の仮処分を申し立てた事例。
参照法条 労働基準法93条
体系項目 就業規則(民事) / 就業規則と労働契約
裁判年月日 1995年2月8日
裁判所名 大阪地
裁判形式 決定
事件番号 平成6年 (ヨ) 3382 
裁判結果 一部認容,一部却下
出典 労働判例676号81頁
審級関係
評釈論文
判決理由 〔就業規則-就業規則と労働契約〕
 債務者においては、第一種職員とは、昇給額、定年退職年齢等の労働条件が異なり、定年退職年齢は、昭和六一年四月一日以降は第一種職員の方が第二種職員より一〇歳(昭和六三年一二月二二日以降は五歳)高齢に定められているので、第一種職員を第二種職員と呼称変更する取扱は、就業規則の定めと異なった不利益な扱いであって、許されないというべきである。
 債務者は、昭和六一年六月、右呼称変更につき、労働組合の合意を得たと主張するが、これは労働協約でもなく、これをもって、就業規則と異なる不利益な扱いを合理化することはできない。また、債務者は、右呼称変更につき、所属長から本人に告知して、本人も十分承知のことであるとか、昭和六一年一〇月の昇給辞令に併せてその旨を通告したと主張するが、昇給通告書(書式は〈証拠略〉)自体には右呼称変更の記載はなく、債権者は、昭和六一年一二月頃、協力会発行の機関誌「A」の記載をきっかけに右取り扱いを知って労働組合の委員長にも抗議し(〈証拠略〉)ているものであって、右呼称変更、及びこれにより定年年齢についての不利益な扱いを受けることに同意したということはできない。
 なお、債務者は、右呼称変更の扱いは就業規則の改訂の際意図されており、労働組合の同意も得た上でそのとおり運用されており、これまで右扱いを受けた上六〇歳に達した女子職員二名は何の異議苦情も述べず退職していっているので、改訂後の就業規則は、大阪市交通局の若年定年で退職してきた女子職員については第二種職員として取り扱うと解釈されるべきであると主張するが、就業規則の解釈に際しては、その文言のみによらず諸要素を考慮すべきであるとしても、就業規則の定め自体を変更せずに、これと異なる不利益な取り扱いを就業規則の解釈として適用することは、制限されるべきであって、本件においても、定年退職年齢については就業規則の文言と明らかに異なる不利益な扱いとなる右呼称変更を、右債務者主張事実をもって、就業規則の解釈として適用し、もしくは合理化することは、到底許されないというべきである。