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ID番号 06532
事件名 損害賠償請求控訴事件
いわゆる事件名 さくら銀行事件
争点
事案概要  銀行の窓口業務、証券保管業務、公金収納業務等の業務に従事していた女性職員が手のしびれ等につき銀行の安全配慮義務違反を理由に損害賠償を請求した事例。
参照法条 民法415条
民法145条
民法166条
民法1条2項
体系項目 労働契約(民事) / 労働契約上の権利義務 / 安全配慮(保護)義務・使用者の責任
裁判年月日 1995年5月31日
裁判所名 東京高
裁判形式 判決
事件番号 平成5年 (ネ) 1172 
平成5年 (ネ) 1432 
裁判結果 変更(確定)
出典 タイムズ896号148頁
審級関係 一審/06133/東京地/平 5. 3.25/昭和62年(ワ)11523号
評釈論文
判決理由 〔労働契約-労働契約上の権利義務-安全配慮(保護)義務・使用者の責任〕
 債務不履行による損害賠償請求権については、具体的に債務不履行の事実が存し、これに基づいて損害が発生していれば、債権者の知・不知を問わず消滅時効が進行するものと解される。したがって、債務不履行についても、不法行為と同様に被害者等が損害及び加害者を知りその者に対して損害賠償を請求することが可能となったときから時効期間が進行することを前提とし、本件の場合、救済措置の適用を受けている間は時効期間が進行せず、救済措置の適用が打ち切られた日の翌日から進行する旨の第一審原告の主張は採用することはできない。
 しかしながら、甲四並びに前掲各証拠及び弁論の全趣旨によると、第一審被告は救済措置そのものを適用していたか否かはともかくとして、少なくとも救済措置と同様の措置を第一審原告に施し、昭和四八年上期賞与分及び昭和四九年定期昇給分までは欠勤による控除を行わなかったこと、第一審被告が明確に右措置を取らないことを決定したのは昭和五六年一一月以降であること、第一審原告はそのころまでは救済措置の適用を受けているものと認識していたこと、救済措置には「当該者(または従業員組合)が……民事訴訟の提起を行った場合には上記の救済措置は行わない。」との規定が置かれていることが認められるところ、これによれば、第一審被告の従業員が救済措置の適用を受けようとする限り民事訴訟の提起による解決を控えなければならず、第一審原告にとっても救済措置を適用されていると思っていた昭和五六年一一月ころまでは同様の事情にあったというべきである。このように一方で訴権の行使を妨げるような事情が存する場合には、そもそも消滅時効の進行を停止させることを期待できないのであるから、右期間に時効が進行した結果消滅時効が完成した旨主張することは信義則に反し許されない。