全 情 報

ID番号 06551
事件名 給料請求事件
いわゆる事件名 セントラル警備保障事件
争点
事案概要  二四時間勤務の警備員として勤務していた労働者が、会社に対して超過勤務時間四時間分と仮眠時間四時間分の賃金を受けていないとして、右時間について時間外労働割増賃金を請求した事例。
参照法条 労働基準法32条
労働基準法37条
体系項目 労働時間(民事) / 労働時間の概念 / 仮眠時間
裁判年月日 1995年8月29日
裁判所名 東京地
裁判形式 判決
事件番号 平成6年 (ワ) 6448 
裁判結果 棄却
出典 労経速報1579号12頁
審級関係
評釈論文
判決理由 〔労働時間-労働時間の概念-仮眠時間〕
 問題となるのは、四時間の仮眠時間についての賃金請求権の有無である。
 ところで、被告にあっては、平成二年四月一日施行の給与規則において三、四級警務職員(但し、原告は四級の警務職員であった)に対し、毎月の勤務日程表によって示す所定の就業時間内に含まれる深夜勤務割増賃金及び時間外勤務割増賃金を定額で定め、これを「警務職手当」として支払うこととし、右金額は、付表4に定める一か月四万二〇〇〇円とした(同規則一九条)。
 右制度は、警務職員は、この約八割が二四時間隔日勤務に就いているという勤務実態にあり、そして、警備という勤務の性質上、就業規則に定める休憩時間四時間のうち約二時間が休憩できないという状況にあったことから、現実に就業しない場合であっても、右四時間のうち二時間分を超過勤務時間と見做して取り扱うこととし、警務職員の平成四年四月ころの給与の最高額(二〇万円を上回る者がいなかったが、二〇万円を基礎額とした)を基準に割増賃金を仮定的に定め、これを被告においては便宜上「自動調整超勤手当」と称し、これに深夜労働時間である午後一〇時から翌午前五時までの間の七時間から仮眠時間四時間分を除外した三時間分の深夜割増賃金を加えた合計額を「警務職手当」と称して、警務職員に毎月支払ってきた。
 原告も、本件で問題となっている平成五年八月分及び九月分の賃金として、警務職手当として各月に四万二〇〇〇円の支払を受けた。
 右認定事実によると、被告は三、四級の警務職員に対し、警備という勤務の性質から、現実に勤務をしない場合にあっても、仮眠時間を除外しているとはいえ、三時間分につき深夜割増賃金を「警務職手当」として毎月支払っており、原告も平成五年八月分と九月分につき警務職手当として各四万二〇〇〇円の支払を受けていたというのである。
 そうすると、仮に、仮眠時間四時間分につき深夜割増賃金請求権が存するとしても、原告は、被告から深夜割増賃金としての性格を有する警務職手当として本訴請求額以上の支払を受けているのであるから、右賃金は右支払によって消滅したこととなる。