全 情 報

ID番号 06556
事件名 地位保全等仮処分命令申立事件
いわゆる事件名 大阪相互タクシー事件
争点
事案概要  タクシー会社で営業部長、営業所次長、課長、営業所長等の職にあった者が、会社内にある既存組合とは別の労働組合を結成し組合役員に就任したことに対して、会社の信用を著しく失墜させた等として懲戒解雇され、その効力を争って地位保全の仮処分を申請した事例。
参照法条 労働基準法89条1項9号
体系項目 懲戒・懲戒解雇 / 懲戒事由 / 信用失墜
懲戒・懲戒解雇 / 懲戒権の濫用
裁判年月日 1995年9月4日
裁判所名 大阪地
裁判形式 決定
事件番号 平成5年 (ヨ) 3927 
平成6年 (ヨ) 87 
裁判結果 認容,一部却下
出典 労経速報1578号8頁/労働判例682号42頁
審級関係
評釈論文 梅本圭一郎・平成8年度主要民事判例解説〔判例タイムズ臨時増刊945〕402~403頁1997年9月
判決理由 〔懲戒・懲戒解雇-懲戒事由-信用失墜〕
〔懲戒・懲戒解雇-懲戒権の濫用〕
 債務者は、債権者Aが、「社外から指弾を受ける行為をし、会社の信用を著しく失墜させた」旨主張する。
 確かに、債権者Aは、前記二1(一)のとおり、部長職を解任されるまで、単に労組法二条但書一号が規定する地位にあったというにとどまらず、労務部長として債務者の利益を代表し、労働組合との交渉に当たってきたものであって、労務関係上の機密にも接しており、そのような者が現職のまま労働組合の結成(しかも、乗務員がB組合として独立するまでは、管理職のみの組合ではなかった。)に関わることは、対外的にも対内的にも労組法七条三号の禁ずる使用者の支配・介入であるとの疑いを抱かせるものであり、場合によっては、信義にもとり、「社外から指弾を受ける行為をし、会社の信用を著しく失墜させた」といい得よう。
 しかしながら、債権者Aが債権者組合の結成に関わったのは、前記のとおり、同債権者が部長職を解任された後であり、債務者が主張するような要職にあった時期ではない(役員待遇は、もともと実質を伴わないものであったが、それも事実上解任されたとみてよい)。池田営業所の所長という肩書は有していたが、前記のとおり、その職務は、市場調査名目で営業車に乗務させられていたものであって、実質的には、労組法二条但書一号が規定するような者ではなく、その者による労働組合の結成が、社会的非難を浴びるような地位にはなかった(部長職時代に接した債務者の機密事項を組合活動に使用するなどといった背信行為もない)。債務者の右主張は採り得ない。