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ID番号 06557
事件名 損害賠償請求上告事件/損害賠償請求附帯上告事件
いわゆる事件名 関西電力事件
争点
事案概要  共産党員またはその同調者であるとされた者が、会社によって会社の方針としてその職制を通じて、職場の内外で監視、尾行され、ロッカーを無断で開けて「民青手帳」を撮影されたりしたことが不法行為にあたるとして損害賠償および謝罪文の掲示等を求めた事例。
参照法条 労働基準法3条
体系項目 労基法の基本原則(民事) / 均等待遇 / 信条と均等待遇(レッドパージなど)
裁判年月日 1995年9月5日
裁判所名 最高三小
裁判形式 判決
事件番号 平成4年 (オ) 10 
裁判結果 棄却
出典 時報1546号115頁/タイムズ891号77頁/裁判所時報1154号1頁/労働判例680号28頁
審級関係 控訴審/05799/大阪高/平 3. 9.24/昭和59年(ネ)1072号
評釈論文 遠藤隆久・労働判例百選<第7版>〔別冊ジュリスト165〕44~45頁/手塚和彰・ジュリスト1103号156~157頁1996年12月15日/松井繁明・労働法律旬報1370号6~11頁1995年10月25日/松本光一郎・平成8年度主要民事判例解説〔判例タイムズ臨時増刊945〕376~377頁1997年9月/上村雄一・法律時報68巻12号84~87頁1996年11月/新谷眞人・季刊労働法179号173~175頁1996年8月/川口美貴・民商法雑誌115巻3号435~438頁1996年12月/中嶋士元也・判例評
判決理由 〔労基法の基本原則-均等待遇-信条と均等待遇(レッドパージなど)〕
 上告人は、被上告人らにおいて現実には企業秩序を破壊し混乱させるなどのおそれがあるとは認められないにもかかわらず、被上告人らが共産党員又はその同調者であることのみを理由とし、その職制等を通じて、職場の内外で被上告人らを継続的に監視する態勢を採った上、被上告人らが極左分子であるとか、上告人の経営方針に非協力的な者であるなどとその思想を非難して、被上告人らとの接触、交際をしないよう他の従業員に働き掛け、種々の方法を用いて被上告人らを職場で孤立させるなどしたというのであり、更にその過程の中で、被上告人Y1及び同Y2については、退社後同人らを尾行したりし、特に被上告人Y2については、ロッカーを無断で開けて私物である「民青手帳」を写真に撮影したりしたというのである。そうであれば、これらの行為は、被上告人らの職場における自由な人間関係を形成する自由を不当に侵害するとともに、その名誉を毀損するものであり、また、被上告人Y2らに対する行為はそのプライバシーを侵害するものでもあって、同人らの人格的利益を侵害するものというべく、これら一連の行為が上告人の会社としての方針に基づいて行われたというのであるから、それらは、それぞれ上告人の各被上告人らに対する不法行為を構成するものといわざるを得ない。原審の判断は、これと同旨をいうものとして是認することができる。また、原判決が上告人による行為として認定判示するところは、右に説示した限りにおいて、不法行為としての違法性評価が可能な程度に各行為の態様を示しており、その特定に欠けるものではない。