全 情 報

ID番号 06783
事件名 解雇無効確認等請求事件
いわゆる事件名 スポルディング・ジャパン事件
争点
事案概要  代表取締役として登記されている者につき、それは名目にすぎないものではなく、自らの責任と裁量において実質的に代表取締役社長としての業務を遂行していたもので、雇用契約関係ではないとした事例。
参照法条 労働基準法9条
民法623条
民法643条
体系項目 労基法の基本原則(民事) / 労働者 / 取締役・監査役
裁判年月日 1996年3月25日
裁判所名 東京地
裁判形式 判決
事件番号 平成4年 (ワ) 20969 
裁判結果 棄却
出典 労経速報1618号12頁
審級関係
評釈論文
判決理由 〔労基法の基本原則-労働者-取締役・監査役〕
 2 以上認定の事実によると、原告は、いわゆるヘッドハンティングにより抜擢され、自らの責任と裁量において実質的に被告会社の代表取締役社長としての業務を遂行していたものであり、その報酬額が高額であり、他の従業員とは異なる特別の待遇を受けていたことを併せ考慮すると、原告と被告会社とが使用従属関係にあったとは認められないから、原告と被告会社との間で雇用契約が成立したということはできない。
 もっとも、証拠(略)によると、原告は、Aに報告し、同人から指示を受けて業務を遂行していたことが認められ、A会社を世界規模のグループ全体としてみた場合、機能的には原告が日本のゼネラルマネージャーとしてその組織全体の中に組み込まれた一員であったことは否定できない。しかし、そのことから直ちに原告と被告会社との契約が雇用契約であると判断することはできないのであって、右のような関係は、一般にみられるグループ企業における子会社の代表取締役と親会社との関係と格別異なるものではない。
 原告は、被告会社代表取締役であるAが原告の直属の上司であったとして、原告と被告会社とが使用従属関係にあった旨を主張している。しかし、Aは日本には在住せず、C社の国際事業担当取締役としてA会社のグループ全体の立場から、上司であるDの指揮下で各国における現地法人の代表者(ゼネラルマネージャー)に対すると同様に、日本法人である被告会社代表取締役社長としての原告に指示を与えていたのであるから、A及びDが被告会社の代表取締役として登記されていたからといって、両名が被告会社における原告の上司であったという見方は当を得たものではない。
 また、原告は、被告会社では株主総会、取締役会が全く開催されていないと主張している。
 しかし、彼にそれらが開催されていないとしても、原告が適法に選任された取締役ないし代表取締役ではなかったというだけのことであり、そのことから直ちに原告と被告会社との間に使用従属関係が肯定されるわけではない。しかも、原告の主張に従えば、A、Dの取締役、代表取締役選任決議も存在しないこととなり、被告会社に原告以外の代表取締役が存在することを原告、被告会社間に使用従属関係があることの根拠に挙げること自体理由がないといわなければならない。