全 情 報

ID番号 06826
事件名 賃金等請求事件
いわゆる事件名 吹田千里郵便局(年休)事件
争点
事案概要  郵便局に勤務する労働者が年休請求につき時季変更権を行使されたにもかかわらず年休指定日に出勤せず訓告処分及び賃金カットを受け、右措置を違法として争った事例。
参照法条 労働基準法39条4項
体系項目 年休(民事) / 時季変更権
裁判年月日 1996年7月10日
裁判所名 大阪地
裁判形式 判決
事件番号 平成6年 (ワ) 11267 
裁判結果 棄却(控訴)
出典 労働判例705号96頁/労経速報1623号3頁
審級関係
評釈論文
判決理由 〔年休-時季変更権〕
 右認定の事実によると、本件年休請求当時、吹田千里局第二集配課では、各班の受持区域である通常配達区及び中1勤務の混合区一区をそれぞれ担当する本務職員を配置し、さらに、非常勤職員を数名配置することによって、業務の正常な運行を確保する体勢(ママ)を採っており、第一〇班には、本務職員一一名、非常勤職員三名が固定的に配置されていたが、平成六年八月一一日に第一〇班が担当する区の配置要員としては、最低七名の本務職員が必要であるところ、本件年休請求のあった平成六年八月九日時点では、第一〇班の本務職員一一名中、四名が非番あるいは年休を取得し、非常勤職員三名のうち一名も休暇を取得していたため、本件年休請求を認めると、同月一一日の第一〇班の最低配置要員である七名を割り六名となって、欠区が生じることは明らかであり、また、夏期休暇中で、お盆前である同日は、他の班でも要員の配置が必要最低限となっていて、非常勤職員による代替も困難な状況にあったことが認められるなど、前記認定の事実を総合すると、本件年休請求を認めることは、第二集配課の業務の正常な運営に支障を生じるおそれがあったというべきである。〔中略〕
 原告は、〔1〕第一〇班には三名の非常勤職員が配置されていたのであるから、要員配置に際して、非常勤職員の存在も考慮すべきである、〔2〕欠区を生じることについて、第一〇班はもとより他の班においても、速達担当者を含めた配達担当職員が最低配置人員を下回ることは珍しくなかった、〔3〕職員が配達を行う場合、担当が特定の区に限定されているものではなく、午前と午後とで別の区の配達を行うこともしばしばあるなど、配達の「区」は実際には有名無実化していて、欠区が生じるということは現実にはあり得ない、〔4〕八月一一日はお盆前で平常よりも配達郵便物数は少ないと予想されていた、〔5〕最低配置人員を割っても、ア 速達(混合)の日勤勤務が予定されていたAに通常配達に担務変更し、本務者六名で通常配達区を担当し、速達の中勤については、非常勤職員、管理職の欠務補充又は他班の職員による代替勤務を確保する、イ 代替要員の確保ができなくても、右Aに速達の中勤を担当させ、通常配達区のうち一〇二区を欠区として、一〇四区担当のBを除く四名の本務者で昼から一〇二区を手分けして配達することにより、本件年休請求を認めても何ら業務の正常な運営に支障を生じることはなかった旨主張し、(人証略)及び原告は、右主張に沿う供述をする。
 しかし、〔1〕については、前記認定のように、本件時季変更は、非常勤職員の存在をも考慮した上なされたものであるし、〔2〕については、吹田千里局第二集配課においては、計画段階で最低配置人員を割る人員配置は行っていないが、当日になって突発的に勤務できなくなったなどの理由で、結果的に要員不足を生じることがあることをうかがうことはできる(〈証拠・人証略〉)が、それをもって計画段階から欠区を前提とした要員配置を是認することとはならないし、〔3〕については、担務指定をする際、担当配達区を指定していることは前記認定の事実からも明らかであるし、仮に、原告主張のように、当日の状況により他の区を援助するようなことが行われたとしても、それをもって計画段階から区を指定しないような担務指定がなされることを正当化するものではない、さらに〔4〕については、八月一一日の配達郵便物数が平常よりも少ないと予想されていたと認めるに足る証拠はなく、〔5〕アについては、非常勤職員を速達の中勤に配置することは、超過勤務を当初計画から予定することとなるし、非常勤職員に現金書留郵便を配達させないこととしていたことから、不適切であること、管理職の欠務補充を当初計画から予定することは、管理職の職務内容等に徴すると、適切でないこと、さらに、他班の職員による代替勤務の確保は、通区の上で問題があることに加え、従前第二集配課においては、計画段階から他班の応援を予定することはなかったこと(〈証拠・人証略〉、弁論の全趣旨)などの事情を総合すると、右の方法による人員確保は相当でないし、〔5〕イについては、当初計画から通常配達区のうち一〇二区を欠区とすることは、通常の配達業務の運行としては好ましいことでなく、この点においてまず相当でなく、さらに、一〇四区担当のBを除く四名の本務者で昼から一〇二区を手分けして配達するという点についても、当日の各区の業務量により何らの問題なく遂行できるか不明であるとしなければならないことに徴すると、右の方法も相当なものということはできない。
 したがって、原告の右主張は理由がない。
 3 よって、本件時季変更は適法である。〔中略〕
 C課長は、本件年休請求に対し、D課長代理及びE班長と要員配置の検討をした上、原告に対し、要員配置上これを認めることが困難であることを告げたことは前記認定のとおりであり、また、同課長が原告に対し、年休取得の理由を聞いた趣旨が、原告が休暇を必要としている事情いかんによっては、社会通念に照らして本件年休請求を認めざるを得ない場合もあることをおもんばかってのことであることは前記認定のとおりであり、同課長の右のような措置には何ら責められるところはなく、むしろ円滑な業務の運行と年休付与の調整のためには妥当なことであるということができる。