全 情 報

ID番号 06857
事件名 賃金請求事件
いわゆる事件名 山口観光事件
争点
事案概要  懲戒処分当時に使用者が認識していなかった労働者の非違行為は、特段の事情のない限り、当該懲戒の理由とされたものでないことが明らかであるから、その存在をもって当該懲戒の有効性を根拠づけることはできないとした事例。
参照法条 労働基準法89条1項9号
体系項目 懲戒・懲戒解雇 / 裁判における懲戒事由の追加・告知された懲戒事由の実質的同一性
裁判年月日 1996年9月26日
裁判所名 最高一小
裁判形式 判決
事件番号 平成8年 (オ) 752 
裁判結果 棄却
出典 時報1582号131頁/タイムズ922号201頁/労働判例708号31頁/労経速報1636号3頁/裁判所時報1180号1頁
審級関係 控訴審/大阪高/平 7.12.13/平成7年(ネ)1717号
評釈論文 下井隆史・判例評論460〔判例時報1597〕234~238頁1997年6月1日/三浦隆志・平成9年度主要民事判例解説〔判例タイムズ臨時増刊978〕289~290頁1998年9月/寺井基博・労働判例百選<第7版>〔別冊ジュリスト165〕152~153頁/辻村昌昭・季刊労働法183号192~197頁1997年9月/土田道夫・ジュリスト1139号206~209頁1998年8月1日/藤本茂・法律時報69巻12号108~111頁1997年11月/道幸哲也・労働法律旬報1405号46~51頁1997年4月10日
判決理由 〔懲戒・懲戒解雇-裁判時における懲戒事由の追加〕
 所論は、被上告人の年齢詐称の事実を本件解雇の理由として主張することはできないとした原審の判断は、懲戒権の行使に関する法律解釈を誤るものであると主張する。しかしながら、使用者が労働者に対して行う懲戒は、労働者の企業秩序違反行為を理由として、一種の秩序罰を課するものであるから、具体的な懲戒の適否は、その理由とされた非違行為との関係において判断されるべきものである。したがって、懲戒当時に使用者が認識していなかった非違行為は、特段の事情のない限り、当該懲戒の理由とされたものでないことが明らかであるから、その存在をもって当該懲戒の有効性を根拠付けることはできないものというべきである。これを本件についてみるに、原審の適法に確定したところによれば、本件懲戒解雇は、被上告人が休暇を請求したことやその際の応接態度等を理由としてされたものであって、本件懲戒解雇当時、上告人において、被上告人の年齢詐称の事実を認識していなかったというのであるから、右年齢詐称をもって本件懲戒解雇の有効性を根拠付けることはできない。これと同旨の原審の前記判断は、正当として是認することができ、その過程に所論の違法はなく、右判断は、所論引用の判例に抵触するものではない。論旨は採用することができない。