全 情 報

ID番号 06888
事件名 退職金等請求事件
いわゆる事件名 東京ゼネラル事件
争点
事案概要  退職願の効果につき、就業規則における規定により退職願提出二週間を経過した時点で、退職の法的効果が生じるとされた事例。
 労働者が退職した場合、使用者は、社会保険の資格喪失手続、退職金支払手続を速やかに履行しないときは、使用者の債務不履行になるとした事例。
参照法条 労働基準法2章
労働基準法22条
民法627条
体系項目 退職 / 任意退職
退職 / 金品の返還
裁判年月日 1996年12月20日
裁判所名 東京地
裁判形式 判決
事件番号 平成7年 (ワ) 15676 
裁判結果 認容,一部棄却(控訴)
出典 労働判例711号52頁
審級関係
評釈論文
判決理由 〔退職-任意退職〕
 3 (退職願提出後一四日を経過したときは退職となる旨の就業規則の定めがあること)によれば、原告は、平成七年二月半ばころに退職届を提出しているから、被告が退職を承認してはいないものの、就業規則の定めにより、遅くとも平成七年三月初めころには、被告を退職した旨の法的効果が発生したものと認められる(なお、被告は原告が業務の引継ぎを行っていない点を主張するが、具体的な引継ぎ未了事項に関する主張立証がないうえ、仮に何らかの引継ぎ未了事項があったとしても、被告の就業規則の下においては、これのみにより退職の法的効果の発生を妨げるものではない)。
〔退職-金品の返還〕
 原告が被告を退職したものと認められる後の平成七年三月末の段階では、被告において、商品取引所に対する外務員の登録抹消申請手続、社会保険の資格喪失手続、退職金支払手続等はなされておらず、外務員の登録抹消申請手続は平成七年一〇月二五日、退職金の支払手続は同年一二月一二日になって行われ、社会保険の資格喪失手続も少なくとも平成七年七月一二日の段階では行われていないことが認められる。ところで、証拠(〈証拠略〉)及び弁論の全趣旨によれば、労働契約上、被告は、使用者として原告が退職した場合には速やかに商品取引所に対する外務員の登録抹消申請手続、社会保険の資格喪失手続、退職金支払手続等を行うべき義務があるというべきであり、これを速やかに履行しなかった被告には債務不履行があるものと認められる。
 ところで、被告は、右諸手続が遅れた理由として、原告が訴外会社へ転職する可能性が大きく、他にも被告から訴外会社への転職者が多発していたことから、協会に対し、従業員の移動に関して会員間で生じた紛争として被告と訴外会社との間の仲介の申出を行い、協会による仲介手続が行われていたことをあげている。しかしながら、右仲介手続は被告と訴外会社間の問題であり、前述のとおり平成七年三月初めの段階で退職していると認められる原告に対する関係において、右諸手続を遅らせるべき正当な理由とならないことは明らかであり、被告の主張は理由がない。