全 情 報

ID番号 06942
事件名 遺族補償不支給処分取消請求
いわゆる事件名 淀川労働基準監督署長事件
争点
事案概要  親族の結婚披露宴に出席後、急性心不全で死亡した鉄道線路の保守に従事していた労働者につき、業務と死亡との間に相当因果関係を認めることはできないとした事例。
参照法条 労働者災害補償保険法7条1項
体系項目 労災補償・労災保険 / 業務上・外認定 / 業務起因性
裁判年月日 1997年4月21日
裁判所名 大阪地
裁判形式 判決
事件番号 平成6年 (行ウ) 64 
裁判結果 棄却(確定)
出典 労働判例718号29頁
審級関係
評釈論文
判決理由 〔労災補償・労災保険-業務上・外認定-業務起因性〕
 前記一 (勤務実態)認定事実によれば、確かに、Aの発症前四か月間における勤務状況は、長時間労働、夜間作業、肉体労働、屋外労働を含み、一般勤労者に比し、その過重性は否定できない。しかし、以上に認定してきたとおり、会社における同職種労働者に比し、Aのみが過重な業務に就いていたとは認め難く、同職種労働者に同様の症状あるいは疾病を発症している者がいるという証拠もないこと、Aは長期にわたって軌道工としての業務に従事しているにも関わらず、その健康状態に悪化が見られないこと、死亡に至る経緯としては、A自身の業務と比較しても、発症前一週間ほどの勤務は、それまでに比し、かなり軽減されており、夜勤も少なく、休暇も取得しており、気候に異常はなく、冬の寒さも峠を越していること、発症前日は、昼勤で会議出席者の送迎の仕事に従事したのみで、現場作業には従事しておらず、午後三時三〇分には勤務を終えていること、発症当日は、姪の結婚披露宴出席のため、休暇を取ってはるばる大阪から北海道へ赴き、発症時の現場は、結婚披露宴会場であって、死亡時の血中アルコール濃度が高かったこと及びAの死因が心筋梗塞を含む虚血性心疾患によるものである可能性が五〇パーセントであることに照らせば、Aの業務が死に至るほどの過労・ストレスをもたらすほど過酷・過重であったとは認められず、発症前に業務の負荷が軽減されていたことから、業務を発症の契機とみるよりも、むしろ、他の原因により疾病が発症し、急性心不全により死亡するに至ったと考えるのが自然である。
 (三) B意見は、前記(一)の原告の主張に沿うが、右は、本件業務がことさらに過酷なものであるとの前提に立つものであるが、そもそも、その前提を採用しえないこと、また、ストレスの原因としては、過労等、職業上の原因に限定されず多様な原因が考えられ、その程度も多様と考えられるにもかかわらず、右は、業務上の過労、ストレスと心筋梗塞の関係を単純化した一般論を述べているに過ぎないというべきであること、さらに、筋肉労働と心筋梗塞との関係については、筋肉労働に従事するものが必ず心筋梗塞になるわけではないにもかかわらず、右は、筋肉労働が一般的抽象的に可能性として心筋梗塞発症の危険性を有している旨を論じているに過ぎないというべきであることからみて、説得力を欠き、右B意見は、採用できない。
 (四) したがって、Aの業務と死亡との相当因果関係を認めることができない。