全 情 報

ID番号 06993
事件名 解雇無効確認等請求事件
いわゆる事件名 東京合同自動車事件
争点
事案概要  タクシー会社の乗務員に対する精神病罹患を理由とする解雇につき、罹患の事実が認められ、解雇権の濫用に当たらないとして有効とされ、また妻に病院に連れていくように話したことなどが不法行為には当たらないとされた事例。
参照法条 労働基準法2章
民法1条3項
体系項目 解雇(民事) / 解雇事由 / 病気
解雇(民事) / 解雇権の濫用
裁判年月日 1997年2月7日
裁判所名 東京地
裁判形式 判決
事件番号 平成8年 (ワ) 4272 
裁判結果 棄却
出典 労経速報1655号16頁
審級関係
評釈論文
判決理由 〔解雇-解雇事由-病気〕
〔解雇-解雇権の濫用〕
 2 本件解雇に至る経緯については、証拠(略)によれば、次の事実が認められ、これを覆すに足りる証拠はない。
 (一) 原告は、平成六年一一月一二日、A病院でB医師の診察を受けたが、精神運動興奮状態及び躁状態との病状であり、不穏興奮状態が続いていたため、無断離院や衝動行為のおそれが強く、医療保護入院の手続がなされた(なお、原告は、何ら精神病にり患していないのにもかかわらず、B医師により、監禁されたものであると主張するが、(書証略)により右主張は採用できない)。
 (二) B医師は、原告の妻から、原告をC病院へ転院させるためにA病院を退院させたいとの要望があったため、退院を許可した。原告は、平成六年一二月二〇日にA病院を退院し、同年一二月二一日にD病院でE医師の診察を受けたが、妄想性状態にあり、同年一二月二二日にはC病院でF医師の診察をうけたが、躁状態の病状であり、平成七年二月二八日まで任意入院した(なお、原告は、C病院に入院したのは精神病の治療のためではなく、A病院の処置による後遺症の治療のためである等主張するが、(書証略)より右主張は採用できない)。原告は、退院後、同年四月一一日までC病院での通院治療を受けていた。
 (三) 原告は、平成六年一一月一二日の入院後、被告での勤務を行っていなかったところ、躁状態の病状について、平成七年二月二八日の段階で、就労可能な程度まで軽快したとの診断を受けた。被告は、原告からの申し出により、平成七年三月二一日から原告のタクシー乗務を許可した。〔中略〕
 (五) 原告は、平成八年二月八日、タクシーを運転中、赤に変わった信号を確認しないで前車に追従して交差点に進入して右折を開始したため、青で交差点に進入した左方からの直進車と接触して軽微な物損事故を起こしたものの、相手方の一方的過失によるものであると主張し、事故の分析、反省及び安全運転についての指導の席においても、被告のG課長からの注意を受け入れず、「相手が悪い、自分で解決するから被告の委任状を出せ、微分積分を知っているか、微分積分を知らなければ、この事故はあんたらとは話にならない、ブタか犬を相手にしているようなもので、らちがあかない」等と述べた。また、原告は、同年二月二〇日、配車室にいたH部長及びG課長に対し、「珍しい動物が居る、記念に撮っておく」等述べ、数枚の写真撮影を行った。〔中略〕
 1 原告は、被告が原告の妻に対して原告を精神病院へ連れて行くように申し向け、これにより原告がA病院へ監禁されたと主張し、これが不法行為にあたると主張するところ(請求原因2(一)、5(一))、前記一2で認定のとおり、原告は平成六年一一月一二日当時躁状態で入院が必要な状況にあったのであるから、被告が原告の妻に対して原告を病院へ連れて行くように話したとしても何ら違法な点はなく、さらに被告が原告の妻あるいはA病院のB医師と共謀して原告を監禁するように仕向けたことを認めるに足りる証拠もないから、この点に関する原告の不法行為の請求は、その余の点について判断するまでもなく理由がない。