全 情 報

ID番号 07046
事件名 従業員地位確認等請求事件
いわゆる事件名 関西トナミ運輸事件
争点
事案概要  懲戒解雇に該当する事由を根拠に普通解雇が行われた場合には、その効力は、懲戒解雇としての要件ではなく、普通解雇の要件を満たせば足りるとされた事例。
 同僚に対する暴行を理由とする解雇につき、その態様は悪質であり、労使関係における信頼関係を破壊するに足りる行為であり、解雇権の濫用に当たらないとされた事例。
 解雇に対する同一理由により自宅待機を命じたことにつき、懲戒処分としての出勤停止処分ではなく、二重処分ではないとされた事例。
参照法条 労働基準法2章
体系項目 労働契約(民事) / 労働契約上の権利義務 / 自宅待機命令・出勤停止命令
解雇(民事) / 解雇事由 / 暴力・暴行・暴言
解雇(民事) / 解雇事由 / 懲戒解雇事由に基づく普通解雇
解雇(民事) / 解雇権の濫用
裁判年月日 1997年11月14日
裁判所名 大阪地
裁判形式 判決
事件番号 平成7年 (ワ) 5076 
裁判結果 棄却
出典 労経速報1658号11頁
審級関係
評釈論文
判決理由 〔解雇-解雇事由-懲戒解雇事由に基づく普通解雇〕
 1 以上の認定によれば、被告は、本件パーティにおける原告の暴行行為を主たる理由として、原告を普通解雇したものであると認められる。この点に関し、原告は、本件解雇が懲戒解雇であると主張し、被告が原告に交付した解雇通知書(書証略)にも懲戒解雇の規定である就業規則五二条(なお、右通知書には、五七条と記載されているが、これは、就業規則の条文にミスプリントがあったためであることが明らかである)が引用されているけれども、前記認定のとおり、被告は予告手当を提供した上で原告を普通解雇したものであることが認められ、懲戒解雇に該当する事由を根拠に普通解雇にとどめることも当然に許されるから、原告の主張は理由がない。そして、懲戒解雇に該当する事由を根拠に普通解雇が行われた場合には、その効力は、懲戒解雇としての要件ではなく、普通解雇の要件を満たせば足りるというべきであるから、以下、本件解雇が普通解雇として解雇権の濫用に当たるかどうか検討する。
〔解雇-解雇事由-暴力・暴行・暴言〕
〔解雇-解雇権の濫用〕
 2 前記認定のとおり、原告の暴行は、酒に酔った上の行為であるとはいえ、被告が主催する行事である本件パーティの終了直後に、被告の施設内で行われたもので、同僚のみならず原告を説得しようとした上司に対しても、その顔面を数度に渡り相当激しく殴打するという暴行を加えたもので、被害者には何らの落ち度がなかったことを考慮すると、その態様は悪質であるといわなければならず、労使関係における信頼関係を破壊するに足りる行為であるといわざるを得ず、これを理由に原告を解雇したことは、原告には前記認定のとおり過去にも暴行事件を起こして始末書を提出したことがあること、本件パーティの暴行については、原告は被害者らに謝罪することもなく全く反省の色を見せていなかったこと等を考慮すると、やむを得ないものというべきであり、これが解雇権の濫用に当たるということはできない。
 この点に関し、原告は、原告の行為は、業務上行われたものではないから、企業秩序を破壊するものではないと主張する。しかしながら、確かに、右暴行行為は、休日の出来事であり、また、業務そのものに関連して行われたものではないものの、本件パーティは、被告の行事として行われ、従業員の大多数が出席して行われたものであるから、その終了直後に、被告施設内で行われた原告の暴行行為は、純然たる私生活上の非行と同視することができないことは明らかであって、その態様によっては、企業秩序を破壊するものとして、懲戒の対象となることはもちろん、労働関係における信頼関係を破壊する行為として、解雇の理由にもなりうるというべきであるから、原告の主張は理由がない。
 また、原告は、本件は、酒に酔った上での出来事であるから、ある程度大目に見られるべきことであるとも主張する。しかしながら、本件パーティは純然たる私的行事ではなかったこと、(人証略)によれば、原告は当時それほどひどく酒に酔っていた様子ではなかったことが認められるし、特にA課長に対する暴行が行われたのはパーティ終了から相当時間が経過してからであり、このときにもまだ泥酔していたとは考えられないこと(したがって、酒に酔って当日の様子をよく覚えていない旨の原告の供述はにわかに信用できない)、原告の暴行はかなりの長時間にわたって執拗に続けられたことを考慮すると、本件暴行が酒席での出来事であったからといって、本件解雇が過酷に過ぎるとまではいえないというべきである。〔中略〕
〔労働契約-労働契約上の権利義務-自宅待機命令・出勤停止命令〕
 4 さらに、原告は、被告は原告に対し、本件暴行を理由に出勤停止処分を行っているから、本件解雇は同一の事実を理由とする二重処分であり、無効であるとも主張する。しかしながら、前記認定のとおり、被告が原告に命じた自宅待機は、有給のもので、就業規則に定める懲戒処分としての出勤停止処分ではなく、事実上のものであったことが認められるから、原告の主張は理由がない。なお、自宅待機により、原告は、歩合給が取得できなくなり、事実上給与が減額されるのと同様の不利益を受けることが認められるが、(書証略)によれば、自宅待機は解雇を前提としながら、原告に考える機会を与えることを目的としたものであったことが認められ、その期間も一〇日余りに過ぎなかったことを考えると、これが出勤停止処分と同視しうる程度に原告に不利益を与えるものであるとまではいえない。