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ID番号 07106
事件名 従業員地位確認等請求事件
いわゆる事件名 大阪労働衛生センター第一病院事件
争点
事案概要  病院を経営する財団法人に雇用され臨床検査科で働いていた従業員が、病院経営に対する批判活動に端を発し降格の処分を受け、さらに臨床検査科長に対して就業時間中に暴力行為に及んだことを理由に懲戒解雇され、その無効を主張して争った事例(請求棄却)。
参照法条 労働基準法89条1項9号
体系項目 懲戒・懲戒解雇 / 懲戒事由 / 暴力・暴行・暴言
懲戒・懲戒解雇 / 懲戒手続
懲戒・懲戒解雇 / 処分の量刑
裁判年月日 1998年3月25日
裁判所名 大阪地
裁判形式 判決
事件番号 平成8年 (ワ) 647 
裁判結果 棄却(確定)
出典 労働判例736号28頁
審級関係
評釈論文
判決理由 〔懲戒・懲戒解雇-懲戒事由-暴力・暴行・暴言〕
 原告は、故意に本件第一事件及び本件第二事件を敢行したといわなければならず、これらの行為が被告の就業規則(〈証拠略〉)六二条四号(正当の事由なしに侮蔑し、他人に対して暴行脅迫を加え、又は上長に反抗もしくはその指示命令を守らなかったとき。)、五号(職務上の指示命令に不当に従わず、院内の秩序を乱したり乱そうとしたとき。)、一四号(前条第四号乃至第一〇号に該当し、その情状が重いとき。)、一六号(業務上の事由によらないで、刑法上の罪を犯し、病院が就業に不適当と認めたとき。)の各解雇事由に該当することは明らかである。
 (五)(1) そして、原告は、本件懲戒解雇以前に、本件譴責処分、本件降格処分、本件警告及び本件厳重注意を受けた(これらの処分等が正当であることは、後記のとおりである。)にもかかわらず、本件第一事件及び本件第二事件に及んだばかりでなく、本件第二事件については、一貫して暴行の事実を否認し、A科長の転倒は、原告や分会を陥れるため、A科長が被告と相通じて行った芝居であるなどと主張し、何ら反省の態度を示さなかったのである。
 (2) このような事情を考えると、本件第一事件及び本件第二事件について、懲戒処分を行うことはやむを得なかったというべきであり、また、処分の内容として懲戒解雇を選択したことも、量定として相当であって、重きに過ぎるとは到底いえない。〔中略〕
〔懲戒・懲戒解雇-懲戒手続〕
 1 原告は、被告が本件第一事件につき原告から事情聴取を行っていないことや本件第二事件についても、原告に告知、聴聞の機会を充分与えていないことを理由に、本件懲戒解雇が手続きの適正を欠き、無効である旨を主張する。
 2 しかしながら、本件証拠上、被告における懲戒手続きについては、被告の就業規則(〈証拠略〉)六三条が「懲戒は懲戒審査の議をえて、病院長これを行う。」と規定するだけで、それ以上の定めは見当たらない。
 そして、(証拠略)によれば、被告は、平成七年四月一一日にA科長から、同月一二日に原告から、それぞれ事情を聴取した後、同月一三日に、理事長、病院長、院長室長、総婦長等が構成する懲戒審査を実施した上で、本件懲戒解雇を行ったことが認められる。
 3 使用者が懲戒処分を行う場合においては、就業規則等に定められた手続きを遵守しなければならないことはいうまでもないが、右判示のとおり、被告は、本件懲戒解雇を行うに当たって、懲戒審査を実施し、就業規則所定の手続きを履践している。
 そして、それ以上にどのような手続きを行うかどうかについては、被告の使用者としての裁量に委ねられているというべきであるところ、被告は、少なくとも本件第二事件に関しては、原告から事情聴取を行っているのであり、本件懲戒解雇を行うに当たって、被告の採った手続きを不当と評すべき事情は窺えない。
 4 よって、本件懲戒解雇に手続違背があったということができないばかりでなく、被告が行った手続きに何ら不当な点はないから、原告の右主張は採用し得ない。〔中略〕
〔懲戒・懲戒解雇-処分の量刑〕
 被告と分会の間においては、相当深刻な対立状況があったことが窺えるのではあるが、前記判示の事情に照らせば、右の点を考慮してもなお、本件懲戒解雇は、被告の就業規則所定の懲戒事由に基づくものであり、かつ、量定も相当であるから、不当労働行為に該当するということはできない。