全 情 報

ID番号 07149
事件名 地位保全等仮処分申立事件
いわゆる事件名 本田金属技術事件
争点
事案概要  有期契約を一六年ないし二一年余りにわたり更新してきた場合につき、本件労働契約は期間の定めのない契約と実質的に異ならない状態で存続していたといわなければならず、解雇に関する法理が類推すべきであり、整理解雇の主張は認められないとされた事例。
参照法条 労働基準法2条
民法1条3項
体系項目 解雇(民事) / 短期労働契約の更新拒否(雇止め)
裁判年月日 1998年7月2日
裁判所名 福島地会津若松支
裁判形式 決定
事件番号 平成10年 (ヨ) 10 
裁判結果 認容
出典 労働判例748号110頁
審級関係
評釈論文
判決理由 〔解雇-短期労働契約の更新拒否(雇止め)〕
 平成八年三月まで続いた一年間という雇用契約期間の長さ、債権者らが実際に継続して雇用された期間、契約書の体裁、その他債務者における雇用の実状に照らすならば、債権者らと債務者との雇用契約は、期間の満了ごとに当然更新を重ねてあたかも期間の定めのない契約と実質的に異ならない状態で存続していたものといわなければならず、債務者が雇用契約の更新を拒絶することは、右のような契約を終了させるものといえるから、実質において解雇の意思表示にあたるものというべきであり、したがって、解雇に関する法理が類推されるべきものである。したがって、債務者の主張1(一)の雇用契約期間の終了の主張は採用できない。
 なお、債務者は、同1の(二)及び(三)において、債権者らは、債務者が交付した再就職支援金を受領したので、契約期間が終了したことを自認した旨主張する。審尋の結果によると、債務者は、平成一〇年三月三一日ころ、各債権者の銀行口座に対し、一人当たり一〇万円の金員を振り込んだが、債権者らは、特に右金員の支払を求めたり、振込に同意したことはなく、その受領を拒否し、債務者に対し右金員を回収するよう求めている事実を一応認めることができる。こうした右金員交付の経緯に照らすならば、債権者らが債務者主張のように雇用契約期間が終了したことを認めているとは到底いい難い。
 三 整理解雇の成否について
 債務者は、債務者の主張2において、本件解雇が整理解雇として有効である旨主張する。しかし、債務者の提出した(証拠略)などを検討しても、最近の自動車業界の経営の厳しさ、今後の受注高の減少の見込み及び人員削減の計画などを述べるのみで、債務者の喜多方工場に限ってみても、現実の受注高の減少及びそれに伴って稼働従業員を削減する必要性があることを根拠づける具体的事実の疎明がなされていない。したがって、その余の点について判断するまでもなく、整理解雇の主張は採用できない。
 四 右のとおり、債務者の主張はいずれも採用できないので、債権者らは、現在も債務者との間の雇用契約上の権利を有する地位にある。そして、(証拠略)によると、債権者らは、いずれも債務者より受け取る賃金をほぼ唯一の生活資金とし、妻や老齢の父母あるいは学齢期の子供などを養っており、その年齢などから転職することも困難である事実を一応認めることができる。したがって、保全の必要性を肯定できる。