全 情 報

ID番号 07152
事件名 賃金等請求事件
いわゆる事件名 栄光商事事件
争点
事案概要  休業命令を受けたとする原告の主張につき、解雇の意思表示がなされたものであるとして、休業手当の請求等が棄却された事例。
 附加金の支払請求につき、休業命令を前提としたもので、本件は解雇されたものであり請求理由がないとされた事例。
参照法条 労働基準法26条
労働基準法89条1項3号
労働基準法114条
体系項目 賃金(民事) / 休業手当 / 休業手当の意義
解雇(民事) / 解雇事由 / 職務能力・技量
雑則(民事) / 附加金
裁判年月日 1998年7月13日
裁判所名 東京地
裁判形式 判決
事件番号 平成9年 (ワ) 25609 
裁判結果 一部認容、一部棄却
出典 労経速報1686号10頁
審級関係
評釈論文
判決理由 〔賃金-休業手当-休業手当の意義〕
〔賃金-賃金請求権の発生-休職処分・自宅待機と賃金請求権〕
 2 以上の事実を前提に、原告が平成九年一〇月一七日に休業を命じられたのか、それとも、解雇されたのかについて検討する。
 (一) Aは、その証人尋問において、同月一七日の朝に出勤した原告に対し同人を辞めさせる趣旨で「一〇日くらいしたら給料を取りに来い、そのときまたいろいろ俺も考えてやるから、とにかくちょっと無理だぞ」と言ったところ、原告はそのまま仕事もせずにすぐに帰ってしまったと証言している。
 (二) 被告は本件そば店で働いてもらうために原告を雇い入れたにもかかわらず、原告を同月八日から同月一六日まで本件そば店で勤務させたところ、原告が本件そば店の店員として満足に働けないことが判明した(前記第三の一1(一)ないし(三))というのであるから、Aが原告に対し一〇日くらいしたら給料を取りに来いと言った時点においてAとしては原告を本件そば店の店員として雇用し続けるつもりはなかったというべきであり、Aが同月一七日に原告に一〇日間くらいの休業を命じることはおよそ考えられないこと、そして、前記第三の一1(一)ないし(三)で認定した原告の本件そば店における就労の状況も考え合わせれば、一〇日くらいしたら給料を取りに来いというのは原告を解雇するという趣旨であることは明らかであること、原告がAから一〇日くらいしたら給料を取りに来いと言われた次の日にはお伺書と題する書面(書証略)を作成して被告の郵便受けに投函しているが、お伺書と題する書面(書証略)の記載内容のほか同書面を作成して投函した理由について原告はその本人尋問において解雇されるという不安があったからと供述していることからすれば、原告は一〇日くらいしたら給料を取りに来いというAの発言を解雇の趣旨に受け取っていたと考えられ、このように原告も右のAの発言が原告を解雇するという趣旨であることは十分に理解していたというべきであること、以上を総合考慮すれば、本件そば店の店長であるAは同月一七日原告を解雇したものと認められ、この認定に反する証拠(原告本人)は採用できず、他にこの認定を左右するに足りる証拠はない。
 そして、Aが本件そば店の店長として新たに本件そば店の従業員として雇い入れられた者の採否の権限を被告代表者から与えられていたことは前記第三の一1(一)及び(五)のとおりであるから、被告は同月一七日原告を解雇したというべきである。
〔雑則-附加金〕
 3 原告の休業手当、解雇手当及び付加金の請求(前記第二の三1(一)(1)ないし(3))は、いずれも被告が平成九年一〇月一七日に原告に対し休業を命じたことを前提としているところ、被告が右同日に原告に休業を命じたのではなく原告を解雇したことは右2で認定、説示したとおりであるから、その余の点について判断するまでもなく、原告の休業手当、解雇予告手当及び付加金の請求は理由がない。