全 情 報

ID番号 07270
事件名 解雇無効確認等請求事件
いわゆる事件名 昭和アルミニウム事件
争点
事案概要  関連会社に出向を命ぜられることが多くなった管理職が出向先での勤務態度不良、業務命令違反、上司に対する反抗的な言動などを理由に出向を解かれ、出向元により解雇されたケースにつき、本件出向は業務上の必要性に基づいており労働契約上の債務不履行には当たらないとされた事例。
 右解雇につき、社会通念上著しく不合理とはいえないとして有効とされた事例。
参照法条 労働基準法2章
民法1条3項
体系項目 配転・出向・転籍・派遣 / 出向命令権の限界
解雇(民事) / 解雇事由 / 勤務成績不良・勤務態度
解雇(民事) / 解雇事由 / 上司反抗
解雇(民事) / 解雇事由 / 業務命令違反
解雇(民事) / 解雇権の濫用
裁判年月日 1999年1月25日
裁判所名 大阪地
裁判形式 判決
事件番号 平成8年 (ワ) 8897 
裁判結果 棄却(控訴)
出典 労働判例763号62頁/労経速報1714号3頁
審級関係
評釈論文
判決理由 〔配転・出向・転籍・派遣-出向命令権の限界〕
 一般に、労働契約においては、職種や勤務場所の限定などの特約がない限り、使用者は、その人事権の内容として、従業員の担当職務の決定について広範な裁量権を有し、人事権の行使が労働契約上の債務不履行を構成するのは、当該人事権の行使が不当な目的をもってなされたり、業務上の必要性がないのに従業員に著しい不利益を与える配転や出向がされるなど、社会通念上明らかに相当性を欠き、権利の濫用と評価されるような場合に限られると解すべきである。〔中略〕
 被告による一連の出向等の人事異動は、原告に労働条件及び生活上の不利益を与えるものではないし、昭和六三年からの大阪支店長付主査時代以降の原告の勤務態度等に照らして、被告が新たな職場で原告に再起を期させるという業務上の必要性から比較的短期間の間に出向先や担当業務を変更したことも直ちに不合理とは断定できないから、右人事異動が人事権を濫用するものとして労働契約上の債務不履行にあたるということはできない(なお、本件解雇も解雇権の濫用ではなく、債務不履行にあたらないことは後述のとおりである。)。
〔解雇-解雇事由-勤務成績不良・勤務態度〕
〔解雇-解雇事由-上司反抗〕
〔解雇-解雇事由-業務命令違反〕
〔解雇-解雇権の濫用〕
 原告は、A会社に出向中、仕事に対する意欲がみられず、特に平成六年三月以降は、Bが与えた業務指示に対し、種々難癖を付けてこれに従わないばかりか、過去の不当人事に対する謝罪要求に異常なまでに執着し、これが行われない限り業務を放棄する旨を宣言する書面をBに送付するなどし、同年六月以降は、一時的に業務指示に従って一応の仕事をしたものの、平成七年一月ころからは、冬季賞与の査定が低かったことをきっかけとして、再び常軌を逸した要求や上司を侮辱するような内容を記載した書面をBや被告関係者に頻繁に送付するようになり、出勤してもBとしばしば右要求をめぐって激しく口論などするに至り、他方、職務に対する意欲は全くみられず、かえって引き合いを断るなどA会社の業務を妨害するかの如き投げやりな態度に出るようになったのであって、これら原告の勤務態度及び言動は、原告がそれまで意に反するような人事異動を繰返(ママ)し受けていたという事情を斟酌してもなお、いささか常識の範囲を超えるもので、管理職としてはいうまでもなく、被告の従業員としても適格性を欠くものと評価されてもやむを得ないところである。
 したがって、これら原告の態度を理由としてされた本件解雇は、著しく不合理で社会通念上相当なものとして是認することができないとはいえず、解雇権を濫用するものではないというべきである。