全 情 報

ID番号 07278
事件名 懲戒免職処分取消請求事件
いわゆる事件名 高槻市消防署事件
争点
事案概要  テレフォンクラブと実質的に同内容の営業であるダイヤルQ2事業を、営業の中心となって主体的かつ継続的に関与していたことを理由とする消防職員に対する懲戒免職が適法とされた事例。
参照法条 労働基準法89条9号
地方公務員法29条1項
地方公務員法33条
地方公務員法38条
体系項目 解雇(民事) / 解雇事由 / 名誉・信用失墜
裁判年月日 1999年2月3日
裁判所名 大阪地
裁判形式 判決
事件番号 平成10年 (行ウ) 30 
裁判結果 棄却(控訴)
出典 労働判例759号28頁/労経速報1701号14頁
審級関係
評釈論文
判決理由 〔解雇-解雇事由-名誉・信用失墜〕
 本件営業の社会的評価について
 本件営業形態は右認定のとおりであり、店舗を構えているものではないから、店舗を訪れた客に対し、店舗に設置した電話を利用して、異性との会話の機会を提供するというもの(いわゆるテレフォンクラブ)ではないが、客に対し電話を通じて、未知の異性との会話の機会を提供するという意味では、テレフォンクラブといわれるものとその実質において何ら相異はない。
 このようなテレフォンクラブと称される営業においては、未知の女性との性的関係を期待して利用しようとする不特定の男性が客として念頭に置かれているのであり、それ故また、売春や犯罪の温床となり、判断力の未熟な未成年者が被害に陥りやすいなどとして社会的に強い非難を受けているところであって、地方自治体によっては、条例等で種々の規制等を行っているところがあることは、本件で提出された証拠を待つまでもなく、新聞報道等によって周知されている公知の事実である。
 本件営業もまた、それをテレフォンクラブと呼称するか否かはともかくとして(店舗営業を行っているか否かによって社会的な評価が異なるものではない)、実質的にはこれと同内容の営業であることからすれば、同様の社会的非難にさらされるべきものであることもまた明らかというべきである。
 原告は、本件営業は単に男女の会話の機会を提供するに過ぎず、社会的批判を受けるべきものではないなどと主張するが、本件営業の実質を殊更に隠蔽しようとするものであって、右主張は到底採用できない。
 3 本件処分の処分理由について
 原告は、高槻市消防職員として、その身分取扱に関しては地公法の規制を受け(消防組織法一四条の四第一項)、強い身分保障(地公法二七条等)が認められている反面、地域全体の奉仕者としての立場から、職務専念義務(同法三〇条)の一環として営利企業等の従事制限(同法三八条)や、信用失墜行為の禁止(同法三三条)等の義務を負わされており、服務に関して服務規程六条の適用を受けることはいうまでもないところであり、これらの規定は、地方公務員には勤務時間の内外を問わず、適用があるものと解される。
 そして、右にみたとおり、原告は主体的に本件営業に関わっていたのであるから、この点で営利企業等の従事制限を規定した地公法三八条に該当する。
 また、本件営業は、右のとおり、強い社会的非難を受けるものであり、全体の奉仕者たる立場にある公務員がかかる営業に関わることは、その職種を問わず到底許されないことであり、原告の本件営業への関与は、服務規程六条に違反し、かつ、信用失墜行為を禁止した地公法三三条にも該当する。
 この点につき、原告は、地公法三三条違反を懲戒免職の処分理由とするときは、刑法犯または自然犯的犯罪に該当する行為がある場合に限定して解釈すべきであり、また、公務員の服務関係と民間の労使関係との類比から、職の社会的評価に及ぼす影響が相当重大であると客観的に評価される場合でなければならないなどと主張するが、懲戒免職の処分理由とできる地公法三三条違反行為を刑法犯、自然犯等の犯罪行為に該当する場合に限定して解釈しなければならない理由はないし、仮に民間の労使関係との類比から原告が主張するように限定的に解し、かつ、原告が勤務時間外に職務と関係なく行っていたことや原告が管理職についていないことなどの原告にとって有利な事情を考慮したとしても、原告の本件営業への関与態様は、原告主張の右要件に該当して余りあるものというべきである。
 以上によれば、原告の本件営業への関与行為が、地公法三八条、三三条、服務規程六条に各違反するとして、これに地公法二九条一項一号及び三号を適用して原告を懲戒免職にした被告の本件処分には、事実誤認や法令適用の誤りはない。