全 情 報

ID番号 07294
事件名 損害賠償請求事件
いわゆる事件名 ダイヤモンドコミュニティ事件
争点
事案概要  試用期間を設けていることを定める就業規則が周知されており、三か月程度の試用期間を設けることには合理性があるとされた事例。
 試用期間中の者に対する勤務成積及び勤務態度不良を理由とする解雇が有効とされた事例。
参照法条 労働基準法2章
労働基準法106条1項
体系項目 労働契約(民事) / 試用期間 / 法的性質
労働契約(民事) / 試用期間 / 本採用拒否・解雇
就業規則(民事) / 就業規則の周知
裁判年月日 1999年3月12日
裁判所名 東京地
裁判形式 判決
事件番号 平成10年 (ワ) 18813 
裁判結果 棄却
出典 労経速報1712号9頁
審級関係
評釈論文
判決理由 〔就業規則-就業規則の周知〕
〔労働契約-試用期間-法的性質〕
 一 争点1(試用期間を定めた就業規則の効力)について
 1 証拠(略)及び弁論の全趣旨によれば、被告の就業規則には、従業員を雇用するに当たり、三か月間の試用期間を設け、右試用期間中に適当でないと判断したときは、試用期間満了までにその旨を告げて採用を取り消すことができる旨規定されていること、右就業規則は被告厚木営業所内の書棚ロッカーに備え置かれ、従業員は誰でも閲覧できる状態にあったこと、従業員は、マンション管理人の労務管理という仕事がら、右就業規則を頻繁に使用していたことが認められる。
 2 右事実によれば、被告の就業規則は従業員に周知されていたと認められ、また、会社が従業員を採用するに際し、三か月程度の試用期間を設けることには合理性が認められるから、就業規則の効力に欠けるところはなく、本件解雇時、原告は試用期間中であったと認められる(なお、証人Aの証言及び原告本人尋問の結果によれば、原告自身、試用期間中であることの認識はあったと認められる)。〔中略〕
〔労働契約-試用期間-本採用拒否・解雇〕
 (四) 以上の経緯から、A所長は、これ以上原告に改善を求めることは無理だと判断し、平成一〇年七月二一日、原告に対し、退職勧奨を行った。原告は、これに応じて、翌二二日いったんは自筆の退職届を提出したが、A所長が被告会社所定の用紙による退職届の提出を求めたところ、原告はこの用紙を破り捨て、自筆の退職届の返還を強く要求した。そこで、A所長は右退職届を返還した。
 原告は、翌二三日勤務開始後間もなく、A所長に対し、昨日の対応を謝罪し、同年八月二一日に退職する旨申し出、被告会社所定の退職届用紙に必要事項を記載して提出した。しかし、原告は、同日昼ころ、他の従業員に対し怒りだし、電話連絡を受けて外出先から戻ったA所長が落ち着かせようとしても、「私は悪くない。Bが悪いんだ」と言い張った。A所長は、これ以上原告がいると営業所の業務に支障を来すと考え、原告に対し、七月二七日付けで解雇通知を出すから、もう会社に来なくてよいと告げた。原告は、「そんなの関係ない。私は来ますから」と言い、しばらくして厚木営業所から出て行ったが、一五分ほどして戻って来て、A所長に対して謝罪し、本日付けで退職する旨申し出て、退職届を書き直して提出した。
 しかし、原告が同年七月二三日の夜間に厚木営業所のC係長の自宅に電話をかけるなどの行動に出たため、A所長は解雇の手続をとったほうがよいと考え、被告本社へその旨報告し、被告において、書面をもって解雇の意思表示をした。〔中略〕
 三 争点3(解雇の適法性)について
 本件解雇の違法事由として原告の主張するところ(前記第二の二1(一)の〔1〕ないし〔4〕)について検討するに、同〔1〕については、三〇日前に解雇予告をしなくても、三〇日分の平均賃金を解雇予告手当として支払えば解雇できること(労働基準法二〇条一項本文)、同〔2〕については、原告がBに対し訴訟を提起したことを解雇理由としているとは証拠上認められないこと、同〔3〕については、A所長が原告の弁解を聞いていると認められること、同〔4〕については、社会保険に加入できない期間が生じたことが解雇を違法なものとするとは解されないこと、から原告の主張はいずれも理由がない。
 四 結論
 以上のとおりであるから、被告のした解雇は適法である。したがって、原告の損害につき判断するまでもなく請求は理由がない。