全 情 報

ID番号 07399
事件名 賃金等請求事件
いわゆる事件名 協生証券事件
争点
事案概要  上司に対する侮辱的な言動をしばしば行ったことを理由に五日間の出勤停止処分を受けた証券会社の労働者が右処分を違法として、出勤停止処分期間中の給与及び慰謝料二〇万円を請求したケースで、上司に対する侮辱的な言動を理由に五日間の出勤停止処分を行うことは裁量権の濫用には当たらないとして棄却された事例。
参照法条 労働基準法89条1項9号
体系項目 懲戒・懲戒解雇 / 懲戒事由 / 暴力・暴行・暴言
懲戒・懲戒解雇 / 処分の量刑
裁判年月日 1999年10月29日
裁判所名 東京地
裁判形式 判決
事件番号 平成8年 (ワ) 22021 
裁判結果 棄却
出典 労経速報1724号13頁
審級関係
評釈論文
判決理由 〔懲戒・懲戒解雇-懲戒事由-暴力・暴行・暴言〕
 前記一の認定事実及び被告の就業規則及び賞罰規定を前提として判断するに、原告の本件処分理由(二)ないし(四)及び同(六)ないし(八)の各言動は、いずれも上司に対する侮辱的言動でかつ職場の秩序を乱すものにほかならないから、就業規則六六条、賞罰規定一〇条2号、5号及び7号に該当するというべきである。〔中略〕
〔懲戒・懲戒解雇-処分の量刑〕
 前記認定の本件処分理由(二)ないし(四)及び同(六)ないし(八)の原告の各言動は、個別的には比較的軽微なものもあるが、類似の言動がたびたび繰返されていること、原告は職務にはまじめに励んでおり、主観的には証券取引法の遵守に関して上司への申入れを行い、また、被告の他の社員の株式売買の発注方法が証券取引法及び社内規則に違反しないよう注意を求める意図で職場において行動していたことがあったとしても、原告の本件処分理由(二)ないし(四)及び同(六)ないし(八)の各言動は、単に穏当を欠くというに止まらず、いずれも上司に対する侮辱的言動で職場秩序を乱すものといわざるを得ないから、被告の企業秩序維持の見地からこれを放置することはできないものであり、被告が主として賃金上の不利益を伴うにとどまる出勤停止処分を選択し、かつその出勤停止期間も五日間であることからすれば、本件処分が社会通念上合理性を欠くということはできない。
 したがって、被告に裁量権の濫用はなく、被告の原告に対する本件処分は有効といえる。