全 情 報

ID番号 07470
事件名 損害賠償等請求事件
いわゆる事件名 大電事件
争点
事案概要  電気工事等の請負を目的とする会社Xが、仮払請求書に基づき本社から送金された金額を支払先へ送金し各立替者へ支払う業務等を担当していた支店勤務の元従業員Yから退職届を提出されたが、領収書の改ざん、請求書の偽造、弔慰金を会社より騙取したことを理由にYを懲戒解雇し、退職金規定(退職金支給までに在職中の行為について懲戒理由が発見された場合には退職金を支給しない旨)に基づいて退職金を支給しなかったところ、Yは提出した退職届は受理されたと主張していたことから、Yに対して(1)不法行為責任の基づく損害賠償の支払及び(2)会社はYに対して退職金を支払う義務のないことの確認を請求したケースで、(1)については、Yの不正行為によって会社は損害を被ったとして、請求が一部認容され、(2)についても請求が認容された事例。
参照法条 民法709条
労働基準法11条
労働基準法89条1項3号の2
体系項目 労働契約(民事) / 労働契約上の権利義務 / 労働者の損害賠償義務
賃金(民事) / 退職金 / 懲戒等の際の支給制限
裁判年月日 1999年11月29日
裁判所名 大阪地
裁判形式 判決
事件番号 平成9年 (ワ) 8967 
裁判結果 一部認容、一部棄却
出典 労経速報1727号14頁
審級関係
評釈論文
判決理由 〔労働契約-労働契約上の権利義務-労働者の損害賠償義務〕
 以上より、別紙記載のうち、一から二三、二五、二六、二八ないし八八、九〇について、被告が原告より金員を騙取したことが認められる。ただし別紙番号八六については、退職するに際して被告が立替金を請求したため、Aが個人の預金から被告に支払ったものであって(証拠略)、原告が右金員を出捐したとまで認めるに足りる証拠はない。また前述のとおり別紙番号八八については、被告の領得した金額は六一八円である。
 従って、本件不正行為により原告が被った損害額は、四〇六九八九〇円である。また本件における弁護士費用としては四〇万円が相当である。
〔賃金-退職金-懲戒等の際の支給制限〕
 本件において、被告に不正行為があったことは認められ、これが懲戒事由(就業規則六二条五号 第九五の一)となることは明らかである。そして原告の退職金規定には、退職金支給までに在職中の行為について懲戒理由が発見された場合には退職金を支給しない旨の規定がある(書証略)。従って、右退職金規定によれば、被告には、原告に対する退職金の請求権は認められない。