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ID番号 07476
事件名 解雇予告手当請求控訴事件
いわゆる事件名 シティズ事件
争点
事案概要  金銭貸付け等を業とする会社に採用された労働者が、身元保証書の提出を拒否したことから、予告なく解雇されたとして解雇予告手当金及び遅延損害金を請求したケースで、右会社では、金銭を扱うことに伴う横領などの事故を防ぐために、社員に自覚を促す意味も込めて、身元保証書の提出を社員の採用の条件としており、就業規則には、社員は採用される際には履歴書等とともに、身元保証書(保証人二名連署、印鑑証明書添付)を提出しなければならない旨の規定をおいていた。原審は、労働基準法二〇条一項ただし書の「労働者の責に帰すべき事由」とは、労働者が予告なく即時に解雇されてもやむを得ないと客観的に認められる重大で悪質なものであることをいい、右会社が期限を定めて身元保証書の提出を求め、その提出がなかったとして予告なく即時解雇したことは、予告なく即時解雇するに必要な、労働者の責めに帰すべき事由に当たるということはできないとして請求を認容していたため、会社が控訴していたが、右身元保証書の不提出は労働者の責めに帰すべき事由に当たるとして控訴が認容された事例。
参照法条 労働基準法20条1項但書
体系項目 解雇(民事) / 解雇予告と除外認定 / 労働者の責に帰すべき事由
裁判年月日 1999年12月16日
裁判所名 東京地
裁判形式 判決
事件番号 平成11年 (レ) 262 
裁判結果 認容(確定)
出典 労働判例780号61頁/労経速報1735号24頁
審級関係 一審/07436/東京簡/平11. 6.21/平成11年(ハ)76号
評釈論文
判決理由 〔解雇-解雇予告と除外認定-労働者の責に帰すべき事由〕
 1 労基法二〇条一項ただし書にいう「労働者の責に帰すべき事由」とは、当該労働者が予告期間を置かずに即時解雇されてもやむを得ないと認められるほどに重大な服務規律違反又は背信行為を意味するものと解するのが相当である。
 2 前記第四の一1で認定した事実によれば、控訴人が被控訴人を解雇したのは、身元保証書の提出が被控訴人の採用の条件とされていたにもかかわらず、被控訴人は控訴人からその提出を求められた平成一〇年三月三日以降その提出に応ぜず、同年七月七日には同月中に提出しなければ八月からは貸付けをさせないと申し渡されたにもかかわらずその提出に応じなかったことによるものである。金銭貸付け等を業とする会社である控訴人において社員に身元保証書を提出させる意味(前記第四の一1(一))に照らせば、被控訴人が右のとおり身元保証書を提出しなかったことは従業員としての適格性に重大な疑義を抱かせる重大な服務規律違反又は背信行為というべきであり、被控訴人が控訴人に入社する前に金融機関で勤務したことがあり、その際身元保証書を提出していること(前記第四の一1(六))からすると、被控訴人も控訴人が身元保証書の提出を求めた意味を十分理解していたものと考えられるのであって、それにもかかわらず、Aから申し渡された期限までに身元保証書を提出しなかったというのであるから、身元保証書の不提出を理由とした控訴人による被控訴人の解雇は労基法二〇条一項ただし書にいう「労働者の責に帰すべき事由」に基づく解雇に当たるというべきである。
 3 以上によれば、控訴人は労基法二〇条一項ただし書により被控訴人に対し解雇予告手当の支払義務を負わない。