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ID番号 07538
事件名 補助参加申出の却下決定に対する即時抗告事件
いわゆる事件名 レンゴー事件
争点
事案概要  段ボールの製造販売会社Z(抗告人)が、職務内容の変更、配置転換、長時間労働という状況下で汎血管内凝固(傷病経過に影響を及ぼした病名としてくも膜下出血)を直接死因として死亡した従業員Aの遺族X(基本事件原告)が栃木労基署長Y(基本事件被告)に対し、Yがなした労災保険法による遺族補償給付及び葬祭料の不支給処分の取消しを請求する訴訟を提起したため業務起因性等が争われているところ、仮に労働災害の認定がなされた場合には、事実上Zの損害賠償義務の存否、労災保険の保険料率に影響が及ぶことから、Zにも利害関係があるとして、Yを補助するための補助参加の申出書を提出したケースで、基本事件において従業員の死亡につき業務起因性が認める判決がされたとしても、将来、XのZに対する安全配慮義務等を理由とする損害賠償訴訟が提起されたときに、右判決の判断が後訴におけるZの損害賠償義務の有無に関する判断に事実上不利益な影響を及ぼすおそれがあるに止まり、本件処分の取消請求の帰趨により、Zにつき何らの権利義務の変動を生ずるものではないし、法律上の利害関係があるということはできないとして、補助参加の申出を却下した原決定は相当であるとして、Zの抗告が棄却された事例。
参照法条 労働者災害補償保険法1条
労働者災害補償保険法7条1項1号
民事訴訟法(平成8年改正前)42条
行政事件訴訟法22条1項
体系項目 労災補償・労災保険 / 審査請求・行政訴訟 / 事業主の訴訟参加
裁判年月日 2000年4月13日
裁判所名 東京高
裁判形式 決定
事件番号 平成12年 (行ス) 10 
裁判結果 棄却
出典 労働判例793号71頁
審級関係 上告審/07720/最高一小/平13. 2.22/平成12年(行フ)3号
評釈論文
判決理由 〔労災補償・労災保険-審査請求・行政訴訟-事業主の訴訟参加〕
 行政事件訴訟法22条1項は、「訴訟の結果により権利を害される第三者」は訴訟に参加することができるものと定めているところ、同条4項は民事訴訟法40条1項ないし3項を準用しているので、右参加の性質は、いわゆる共同訴訟的補助参加であると解すべきところ、ここにいう「訴訟の結果により権利を害される第三者」とは、処分取消判決の効力を受けることにより又は取消判決の拘束力による新たな処分がされることにより権利を侵害されることになる第三者をいうものと解される。また、同法7条の準用する民事訴訟法42条は、「訴訟の結果について利害関係を有する第三者」は補助参加をすることができるものと定めているところ、ここにいう「訴訟の結果」とは、判決理由中で判断される事項についてではなく、判決主文に示される訴訟物たる権利又は法律関係の存在をいうものであり、また、利害関係というのも、事実上の利害関係では十分ではなく、法律上の利害関係があることを要するものと解すべきである。〔中略〕
〔労災補償・労災保険-審査請求・行政訴訟-事業主の訴訟参加〕
 本件についてみると、前記のとおり、基本事件は、原告において、抗告人の職員であった亡Aが、抗告人における職務内容の変更、配置転換、組織替えによる不慣れな環境の中で、長時間労働により肉体的、精神的に疲労が蓄積した結果死亡したもので、過労死であることは明らかであるから業務起因性があると主張して、本件処分の取消しを求めるものである。そうすると、原告が将来、使用者であった抗告人に対し、安全配慮義務違反等を理由とする損害賠償請求訴訟を提起した場合には、亡Aの業務と死亡との相当因果関係が重要な争点になるものと予想され、基本事件における業務起因性の有無の判断と損害賠償請求訴訟における相当因果関係の有無の判断は相当程度重なり、類似した判断がされる可能性を否定することはできない。
 しかし、前者における業務起因性が肯定されたとしても、これによって、当然に後者における相当因果関係が肯定されるものではない上、後者における責任の有無、賠償額の範囲は、使用者の故意、過失、さらには、過失相殺等の判断を経て初めて確定されるものであるから、前者の判断が後者の判断と必ずしも一致するものではなく、基本事件において業務起因性を認める判決がされたとしても、将来、安全配慮義務違反等を理由とする損害賠償請求訴訟が提起されたときに、右判決の判断が後訴における抗告人の損害賠償責任の有無に関する判断に事実上不利益な影響を及ぼすおそれがあるに止まり、本件処分の取消請求の帰趨により、抗告人につき、何らの権利義務の変動を生ずるものではないし、法律上の利害関係があるということはできない。〔中略〕
〔労災補償・労災保険-審査請求・行政訴訟-事業主の訴訟参加〕
 したがって、抗告人は、「訴訟の結果により権利を害される第三者」又は「訴訟の結果について利害関係を有する第三者」には当たらず、被告を補助するため基本事件に参加する法律上の利益はないものというべきである。