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ID番号 07544
事件名 公務災害認定外裁決取消請求上告事件
いわゆる事件名 地公災基金愛知県支部長(瑞鳳小学校)事件(差戻後上告審)
争点
事案概要  教員歴一二年目で、担任、種々の主任、委員等を勤めていた公立小学校教諭で、市教育委員会主催の球技大会に向けてのポートボールの指導や、修学旅行の準備及び実施のために平時よりも勤務が増大していたなかで、午前の公務終了後になされた午後に行われたポートボールの練習試合の審判中に特発性脳内出血で倒れ脳内血腫除去手術終了数日経過後に、吐物誤嚥による呼吸不全により死亡したA(当時三十四歳既存の疾患なし)の遺族Xが、地公災基金Yに対してなした遺族補償給付請求の不支給処分につき、右公務外認定処分の取消しを請求したケースの差戻後上告審で、右特発性脳内出血とAの死亡との間には相当因果関係があると認めるのが相当であるとしたうえで、(1)練習試合当日午前までの約一か月間のAの公務量は、小学校教職員の標準的公務量やA自身の健康状態に即応した公務量に比べても、Aに過重な肉体的精神的負荷がかかる程に特段に多かったと認めることはできず、公務によりAの有していた脳内微小血管の先天的血管腫様奇形の病変が自然的超過を超えて増悪し、破裂して出血したものとは認めることはできないとし、(2)Xの練習試合当日の午前中の公務からポートボールの審判開始に至るまでの公務は血腫増大の機序における血管病変を自然的超過を超えて増悪させ、死亡の原因となる重篤な血腫の増大を引き起こしたものと認めることはできず、ポートボール審判による負荷がAの全身血圧を上昇させるなどし、血腫増大の機序における血管病変を自然的超過を超えて増悪させ、死亡の原因となる重篤な血腫の増大ないし大出血を引き起こしたと認めることはできず、(3)血腫の増大ないし大出血は、公務に内在する危険が現実化したものとはいえない公務起因性を認めることはできず、またAがポートボール審判等の公務に従事していたことにより診察、治療の機会を喪失し、これにより死亡するに至ったものと認めることはできないとして、結局Aの死亡に公務起因性があるとは認めることはできないとした原審の認定を是認できるとして、Xの上告が棄却された事例。
参照法条 地方公務員災害補償法31条
体系項目 労災補償・労災保険 / 業務上・外認定 / 業務起因性
労災補償・労災保険 / 業務上・外認定 / 脳・心疾患等
裁判年月日 2000年4月21日
裁判所名 最高二小
裁判形式 判決
事件番号 平成10年 (行ツ) 196 
裁判結果 棄却(確定)
出典 労働判例781号15頁/判例地方自治210号66頁
審級関係 差戻控訴審/07113/名古屋高/平10. 3.31/平成8年(行コ)5号
評釈論文 小畑史子・労働基準52巻11号24~28頁2000年11月
判決理由 〔労災補償・労災保険-業務上・外認定-業務起因性〕
〔労災補償・労災保険-業務上・外認定-脳・心疾患等〕
 所論の点に関する原審の事実認定は、原判決挙示の証拠関係に照らし、首肯するに足り、右事実関係の下においては、Aが発症当日に行った公務が脳内出血の拡大に影響を及ぼしたとは認められず、また、発症後直ちに医師の診察を受けたとしても脳内出血の拡大を防ぐことができたとは認められないなどとして、本件処分に違法がないとした原審の判断は、正当として是認することができ、原判決に所論の違法はない。