全 情 報

ID番号 07558
事件名 地位保全等仮処分命令申立事件
いわゆる事件名 大阪ビル管理事件
争点
事案概要  ビルメンテナンス、警備業務等を業とする会社Yに雇用され豊中市役所駐車場で警備業務に従事する正社員X1(組合員)は、Yから、同市役所駐車場に機械ゲートが導入され警備員に余剰人員が生じたことから同市内の図書館への配転が命じられたが、これを拒否した一週間後に、就業規則の規定に基づいて懲戒解雇を通告され、また同市内の図書館で就労していたYのパート社員X2(組合員)は、期間一年の雇用契約を二回更新した後、その期限到来の一か月前に、職場での人間関係の円滑を欠き業務遂行に悪影響が及ぶ可能性があることを理由に同市内の体育館勤務を命じられたが、これに応じなかったことから、就労を拒否されたことから、X1らがYに対し、(1)X1に対する配転命令は、労働組合を嫌悪した不当なものであり、それを拒否したことによる解雇も、解雇権濫用に当たるとして、雇用契約上の地位確認及び賃金の支払を求め、(2)X2に対する不当な配転を拒否したことによる解雇もしくは更新拒絶は無効であるとして、賃金の仮払いを申し立てたケースで、(1)については、本件配転は通勤上の負担などを考慮してなされており、手続的にも組合と協議のうえ一旦X1の承諾を得ていること等から合理性があり、右配転命令拒否は就業規則の懲戒事由に該当し、解雇を無効とすることはできないとして請求が棄却され、(2)についても、当該配転命令はX2所属の労働組合も承諾していること等から、人事権の濫用とはいえず、これに応じなかったことを理由とする会社の更新拒絶には合理的理由があるとして、請求が棄却された事例。
参照法条 労働基準法2章
労働基準法89条1項9号
体系項目 懲戒・懲戒解雇 / 懲戒事由 / 業務命令拒否・違反
解雇(民事) / 短期労働契約の更新拒否(雇止め)
裁判年月日 2000年5月18日
裁判所名 大阪地
裁判形式 決定
事件番号 平成11年 (ヨ) 10133 
裁判結果 却下
出典 労経速報1755号27頁
審級関係
評釈論文
判決理由 〔懲戒・懲戒解雇-懲戒事由-業務命令拒否・違反〕
 債権者X1に対する右配転は、その通勤上の負担などを考慮してされたものであると認められ、これを不合理とする事情は疎明されていない。人事権は、使用者に属するものであるから、その経営上の判断によって行えば足りるもので、かつ、その人選も唯一最上のものである必要はない。(書証略)によれば、右配転によって、債権者X1に著しい不利益が生じるということもなく、また手続的にも、組合と協議のうえ、一旦はその承諾を得ているものである。〔中略〕
〔懲戒・懲戒解雇-懲戒事由-業務命令拒否・違反〕
 異動を命じられた二名が組合員であるというが、それのみから組合員だけを異動の対象としたとまでは認められない。また、組合員の増加を懸念して債権者X1を異動させたともいうが、右配転によって、組合員の増減に影響を生じるとまでは一応にも認められないし、右配転が、組合を嫌悪してされたものであるとまでは認めることができない。
 そうであれば、右配転の拒否は明らかに業務命令に違反し、就業規則第七六条第二項(1)に規定の懲戒事由に該当するものであり、これによる解雇を無効とする事情はないというべきである。
〔解雇-短期労働契約の更新拒否(雇止め)〕
 債権者X2は、平成九年三月始め、期間の定めのあるいわゆるパート従業員として債務者に雇用され、平成九年一〇月に一回目の更新を行って契約書を作成し、平成一〇年一〇月一一日、期間を同月一六日から平成一一年一〇月一五日までとして書面による二回目の更新したこと、債務者は、平成一一年九月一三日、債権者X2に対し、A体育館勤務を命じる旨の人事通達を交付したことを一応認めることができる。これによれば、債権者X2と債務者の雇用契約は、更新を予定していたものであるということができる。しかし、更新がされたのも二回だけであり、更新時には、改めて書面による契約書を作成していることからすると、これが期間の定めのない契約に転化したということはできない。そして、債権者らはパート従業員について過去に配転がされたことはないというが、だからといって配転に労働者の承諾を必要とするとの慣行があったということはできない。債務者が債権者X2に対して行ったA体育館勤務を命じる旨の配転は、債権者X2の就労場所において人間関係の円滑を欠き、そのまま放置すれば業務の遂行等影響を及ぼすことが懸念されたためであることは、(書証略)からも窺え、配置換えの必要があったことは肯定できる。〔中略〕
〔解雇-短期労働契約の更新拒否(雇止め)〕
 また、これによって、債権者X2に労働条件において著しい不利益を与えるものということもできない。これらによれば、債権者X2を配転したことを人事権の濫用ということもできない。さらに、(書証略)によれば、右の配転については、一旦は、債権者X2が加わる労働組合も承諾したものであり、手続的にも咎められるところはない。また、右配転が、債権者X2の組合活動を嫌悪してされたものと認める疎明もない。しかるに、債権者X2は右配転に応じなかったものであるから、債務者の更新拒絶には合理的な理由があるというべきである。