全 情 報

ID番号 07777
事件名 地位確認等請求事件
いわゆる事件名 三井倉庫事件
争点
事案概要  倉庫業を営む会社Yに採用され見習期間を三カ月として関東支社の事務所に配属されたXが、担当の業務は比較的平易な内容であるにもかかわらず頻繁にミスを繰り返すことから事務処理能力が欠如しており、また業務に取組む態度等にも問題があるなど勤務状況に難点があるとの理由で、見習期間を二カ月延長する旨が命じられたが(就業規則には見習い期間延長・短縮規定がある)、延長された見習期間中もミスを繰り返したため、右期間満了の際に、従業員として不適格と認められるとして解雇されたことから、右解雇は無効であると主張して、労働契約上の地位確認、賃金支払及び慰謝料等を請求したケースで、XはYの従業員として求められる能力や適性を著しく欠いており、就業規則上の普通解雇事由(従業員として不適格と認められるとき)が存し、本件解雇が試用期間中のものであることを考慮するまでもなく、著しく不合理であると認めるには至らないことから、本件解雇は有効であるとして請求が棄却された事例。
参照法条 労働基準法2章
労働基準法89条1項3号
体系項目 解雇(民事) / 解雇事由 / 職務能力・技量
解雇(民事) / 解雇権の濫用
裁判年月日 2001年7月2日
裁判所名 東京地
裁判形式 判決
事件番号 平成11年 (ワ) 27111 
裁判結果 棄却
出典 労経速報1784号3頁
審級関係
評釈論文
判決理由 〔解雇-解雇事由-職務能力・技量〕
 被告従業員として求められる能力や適性は、一般的な能力から直ちに推し量ることのできるものではなく、被告の業務内容等から判断すべきところ、これが倉庫業であること等からすると、被告従業員としては事務処理の堅実性、確実性や職務命令に対する忠実性こそが重要であり、創造性や独創性はむしろ業務の妨げとなりかねないとも考えられるのであり、原告が一般的な能力に劣るところはないことと被告従業員として求められる能力や適性を著しく欠くこととは矛盾しない。〔中略〕
 また、原告は貨物の流れや業務内容の基本を教えられなかったため、簡単なことが簡単とは思えずにミスをしたとも供述するが、それらは決して複雑なことではなく、顧客からの依頼書を見れば推測のつく程度のことであり、しかも、七月ころにはそのことを理解したとしながら(書証略)、さらに看過しがたいものを含めミスを繰返しており、同供述は採用できない。〔中略〕
 今後の改善の見込みについても、見習期間を延長して約四か月にわたり教育指導をし、原告の認識としても仕事が単純なことだと理解し、いじめも収まってきた後の、七月以降も前記のようなミスが頻発している以上、今後の改善の見込みも期待できないし、一般論としても不慣れ、誤解による過誤は改善の可能性があるが、他方ケアレスミスや仕事に対する興味が持てない事によるミスは本採用になって仕事に慣れれば余計に多くなる恐れがある。〔中略〕
〔解雇-解雇権の濫用〕
 普通解雇事由が存する場合でも、当該具体的な事情の下において、解雇に処することが著しく不合理であり、社会通念上相当として是認できない場合は、当該解雇の意思表示は権利の濫用として無効となるというべきであるが、前記1及び2の事実関係の下では、本件解雇が試用期間中のものであることを考慮するまでもなく、著しく不合理であると認めるには至らない。他にこれを認めるに足りる証拠はない。