全 情 報

ID番号 07840
事件名 損害賠償請求事件
いわゆる事件名
争点
事案概要  交通整理の行われていない交差点手前で一時停止し、両方向からの車両の走行を待機していた後進行した加害車(普通乗用自動車)が、折から左側から進行してきた被害車(自動二輪車)に衝突した事故で植物状態となった会社員A(事故時一八歳、死亡時二四歳)の母Xが、Yら(加害者ほか一名)に対して損害賠償を請求したケースで、当該事故が通勤災害として認められた結果支給されている労災保険の療養給付が、介護料などにも填補されるとして、過失相殺後の控除を認めた事例。
参照法条 労働者災害補償保険法12条の4
体系項目 労災補償・労災保険 / 損害賠償等との関係 / 労災保険と損害賠償
裁判年月日 2000年3月31日
裁判所名 東京地
裁判形式 判決
事件番号 平成10年 (ワ) 17030 
裁判結果 一部認容、一部棄却
出典 交通民集33巻2号681頁
審級関係
評釈論文
判決理由 〔労災補償・労災保険-損害賠償等との関係-労災保険と損害賠償〕
 労災保険による給付は、労働者災害補償保険法(以下、「労災保険法」という。)に基づき、労働者の業務災害等に対して一定の給付をなすものであるが、使用者以外の第三者が加害者であり、かつ、加害者側に責任が認められる場合には、政府は、保険給付した限度で、給付を受けた者の加害者に対する損害賠償請求権を取得し、また、第三者が給付を受けるべき者に対して同一の事由について損害賠償を受けたときは、その限度で給付をしないことができる。(労災保険法一二条の四)から、不法行為に基づく損害賠償と労災保険による保険給付とは、被害者の被害救済のための相互補完的な制度であると解される。したがって、労災保険が適用されたからと言って、被害者にことさら有利な取り扱いをする訳ではないから、過失相殺の適用のある事案では相殺後に控除するのが相当である。
 次に、労災保険法一三条によれば、療養給付の範囲には、単に、診察、薬剤または治療材料の支給、処置、手術、その他の治療にとどまらず、居宅や病院等での療養に伴う看護一般や移送をも含まれているから、損害のてん補にあたっては、右の範囲でてん補性を認めるべきである。
 したがって、本件においては、労災の療養給付は、介護料などにもてん補される。