全 情 報

ID番号 07870
事件名 時間外手当規定確認請求事件
いわゆる事件名 住信情報サービス事件
争点
事案概要  Yが、従来、時間外割増賃金の算出方法として、有給の厚生特別休暇を休日扱いとし、所定勤務時間から控除してきた扱いを改め、就業規則及び給与規定のとおりに控除しないことにした変更を行ったところ、Yの従業員であるXが、上記変更は就業規則に反し、そうでないとしても労使慣行に反し、無効であるとして、従前の算出方法により時間外割増賃金を算出することの確認と支払われるべきであったとする差額賃金の支払を求めたところ、前者については却下、後者については棄却された事例。
参照法条 労働基準法37条
体系項目 労働契約(民事) / 労働契約上の権利義務 / 労働慣行・労使慣行
賃金(民事) / 割増賃金 / 算出方法の変更
裁判年月日 2001年8月31日
裁判所名 大阪地
裁判形式 判決
事件番号 平成13年 (ワ) 1481 
裁判結果 一部却下、一部棄却
出典 労経速報1793号3頁
審級関係
評釈論文
判決理由 〔労働契約-労働契約上の権利義務-労働慣行・労使慣行〕
 被告においては、前記一年における一か月平均勤務時間の算出において、休日のみならず、厚生特別休暇を控除する従前算出方法を行ってきたことは、当事者間に争いがない。そして、(書証略)並びに弁論の全趣旨によれば、被告において厚生特別休暇が休日に準じて扱われたこともあり、従前算出方法が行われていることは従業員の知るところであること、また、従前算出方法は過誤によって採られたものではなく、意識的に行われていたものであること、その期間は一〇年以上に及び、全従業員に対して行われたことが認められる。
 してみれば、従前算出方法は、就業規則、給与規定とは異なる算出方法ではあるものの、労使間の慣行となっていたものというべきである。〔中略〕
〔賃金-割増賃金-算出方法の変更〕
 従前算出方法を現行の計算方法へ変更したことは、労働条件を不利益に変更するものではあるが、従前算出方法が就業規則及び給与規定の明文に反していたことからすれば、これと整合した扱いをするため、その必要があったということができる。そして、上記変更による従業員の不利益は、時間外労働時間の多寡によって異なるが、単価にして四〇円未満であるところ、被告は、他方において、代償措置という意識があったわけではないものの、平成八年七月には、時間外賃金及び深夜勤務の割増賃金の割増率を二割五分から二割七分五厘に増加していたし、平成一一年においては、基本給を増額改定しており、原告も基本給が月額三〇〇〇円増額していること、従業員の平均給与月額は近時においても増加の傾向にあったことが認められるのであって、労働者に対する処遇として、全体的に考察するときは、上記不利益を超える処遇がされているということができる。また、変更の手続きをみるに、(書証略)並びに弁論の全趣旨によれば、被告は、平成一一年四月及び五月、定期的に開催している従業員代表との定例協議会で説明し、平成一一年五月二一日付け人事部通牒で、従業員全員に説明したこと、これに対し、原告を除く従業員からは異議があったことはないと認められる。
 以上を総合すれば、上記従前算出方法の変更は合理性を有するものであって、これを一方的であるというだけで無効とすべき理由はない。