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ID番号 07888
事件名 損害賠償請求控訴事件
いわゆる事件名 運送会社(損害賠償)事件
争点
事案概要  一般区域貨物自動車運送事業を営む会社Xの社員Yは、荷台に移動式の事務所等を積載してX所有のクレーン車を運転して走行中、クレーンのブームを縮め、フックをブーム先端の所定の位置に収納する義務があるのにこれを怠り、その結果、クレーンのブームを歩道橋に衝突させるという交通事故を起こしたため(XはYの同意を得て給料天引きにより四二万円を徴収)、XがYに対し、民法七〇九条及び七一五条三項に基づき、本件事故によって生じた損害の賠償(約四六八万円)を請求した(本訴)のに対し、YがXに対し、X代表者が担当従業員に対し労災保険請求手続を取らないよう命じたため、未払いとなった労災保険金及びXが受領した源泉徴収還付金の支払を請求した(反訴)ケースの控訴審で、本訴については、Yが責任を負うべきことは当事者間に争いがない事実であるところ、本件事故の経緯に照らすと、本件事故についてYに重過失があったとは認め難く、またYには業務中の事故歴があるなどからXにおいてYが再度交通事故を起こす危険が予測できたというべきであるにもかかわらず、Xは適切なリスク管理を怠ったばかりか、本件事故に関する万全の予防策も講じなかったこと、給料から三万円継続して差し引いていたこと等から、本件事故により生じた総損害額の約四分の一に当たる四二万円を弁済したYに対し、更に損害賠償金の支払を求めたり求償権を行使することは損害の公平な見地から許されないというべきであるとして請求を棄却、反訴についてはXの受領した源泉徴収還付金の限度で認容した原審が維持され、Xの控訴が棄却された事例。
参照法条 民法709条
民法715条3項
体系項目 労働契約(民事) / 労働契約上の権利義務 / 労働者の損害賠償義務
裁判年月日 2001年12月6日
裁判所名 福岡高那覇支
裁判形式 判決
事件番号 平成13年 (ネ) 70 
裁判結果 棄却(確定)
出典 労働判例825号72頁
審級関係 一審/07856/那覇地/平13. 3.21/平成11年(ワ)736号
評釈論文 小畑史子・労働基準54巻10号28~32頁2002年10月/中災防安全衛生関係裁判例研究会・働く人の安全と健康3巻12号84~87頁2002年12月
判決理由 〔労働契約-労働契約上の権利義務-労働者の損害賠償義務〕
 次のとおり加除、訂正するほかは、原判決の「第3 争点に対する判断」欄記載のとおりであるから、これを引用する。〔中略〕
 控訴人は、控訴人が零細企業であって優良中小企業と同等の保険加入の責任を問うのは酷であると主張し、沖縄県下でトラックに対する保険加入率が低いこと、控訴人が赤字経営であることを指摘する。しかしながら、控訴人が零細企業で赤字経営であったとしても、上記認定の業務内容、事故発生の危険性等に鑑みると、保険加入等による損害の分散措置を講じないで事故によって生じた損害を従業員の負担に帰せしめることは相当とは認められないから、控訴人指摘の点が上記判断を左右する事情となるものとは言い難い。