全 情 報

ID番号 07943
事件名 損害賠償請求事件
いわゆる事件名 日田市(降任・損害賠償)事件
争点
事案概要  日田市の一般職員であったX(定年退職)が、平成一二年四月に八級職である日田市土地開発公社事務局長から日田市教育委員会事務局学習課参事(八級職)兼夜明振興センター次長(七級職)・夜明公民館主事(三級職)に転任(異動)を命じられたのは、前年に行われた市長選挙に絡む市長らの不当な目的によって不利益な異動を命じられたものであったとして、国家賠償法一条に基づき、日田市に対し慰謝料・弁護士費用及び転任前と転任後の給与(管理職手当)の差額分の支払を請求したケース。; 本件異動は、形式的には転任に該当し、辞令上の補職名、給与支給の基準などの法的側面においては転任として取り扱われているものの、その実質は降任に準じた内容を備えた不利益な処分であり、しかも、本務と兼務の関係が逆転しており、補職名と現実の職務実態が乖離したものであるとしたうえで、本件異動は、Xが主張するとおり、日田市の特別職及び最高幹部職員らが、Xが現職のA市長の対抗馬であるB候補を支持していたのがXであるとの認識の下、これに対する報復の意図をもってXを七級職である夜明振興センター次長及び三級職である夜明公民館主事に補することとし、しかし、そのままでは地方公務員法上の降任に該当し、同法に反することとなることから、これを脱法する意図で、降任に当たらないように、八級職である日田市教育委員会事務局学習課参事に補し、これを主たる職とし、夜明振興センター次長及び夜明公民館主事を兼職としたことを推認できるとし、本件異動は、日田市の特別職や最高幹部らの意図によりA市長及び教育委員会が地方公務員法上の平等取扱いの原則や任用の根本基準に反することを知りつつ、Xに対して敢えて行った報復人事であり、社会通念上著しく妥当性を欠くものと認められ、その裁量権の濫用又は逸脱による違法な処分となるから日田市は国家賠償法一条一項に基づいてこれに伴う損害を賠償する責任を負うとし、慰謝料七〇万円・弁護士費用七万円につき請求が一部認容された(管理職手当の支給は条例等の趣旨に沿っているかにつき若干の疑義があるとして慰謝料の認定において考慮するにとどめられた)事例。
参照法条 労働基準法2章
地方公務員法27条
地方公務員法28条
国家賠償法1条
体系項目 労働契約(民事) / 人事権 / 降格
労働契約(民事) / 労働契約上の権利義務 / 使用者に対する労災以外の損害賠償
裁判年月日 2002年3月29日
裁判所名 大分地日田支
裁判形式 判決
事件番号 平成12年 (ワ) 71 
裁判結果 一部認容、一部棄却(確定)
出典 労働判例829号65頁
審級関係
評釈論文 柴田圭一・季刊労働者の権利245号83~87頁2002年7月
判決理由 〔労働契約-人事権-降格〕
〔労働契約-労働契約上の権利義務-使用者に対する労災以外の損害賠償〕
 本件異動は、A市長、C助役及び6部長を中心とした被告市の特別職や最高幹部らの意図により、A市長及び教育委員会が、地方公務員法上の平等取扱いの原則や任用の根本基準に反することを知りつつ、原告に対して敢えて行なった報復人事であり、社会通念上著しく妥当性を欠くものと認められ、その裁量権の濫用又は逸脱による違法な処分となるから、被告市は、国家賠償法1条1項に基づいて、これに伴う損害を賠償する責任を負う。