全 情 報

ID番号 07965
事件名 所長職地位確認等請求事件
いわゆる事件名 木津運送事件
争点
事案概要  運送業を営む会社Yの出張所の配車係であったXが、Yから偏頗な業務処理、職務専念義務違反、違法な金銭処理を理由に乗務員への配転命令がなされた後、その後の長期欠勤を理由として解雇されたことから、Yに対し、本件解雇は理由がなく無効であるとしてその無効確認及び配転命令は理由がなく無効であるとして配車係の地位にあることの確認を求めるとともに、本件配転命令により賃金が不当に減額されたとして、本件配転命令前の賃金と減額後の賃金の差額相当額の損害賠償の支払並びに本件配転命令・解雇により被った精神的損害に対する慰謝料の支払を請求したケースで、YはXによる配車が結果的に乗務員に不公平感を与える内容であったため、Xを配置換えすることとし、Xを入社当時従事していた乗務員に配転し、更に乗務員と配車係とは賃金体系が異なるため、Xが従前と同じ賃金を得ることができるようなコースを指定し、Xもこれを了承して乗務員としての勤務についたのであることからすると、本件配転命令はその必要性もありXに生じる不利益も考慮されたものでありこれを配転命令権の濫用とはいえないなどとし、又解雇についても、Xは結局、配転命令を了承しながら実際に乗務員として勤務すると職務内容がきつくて乗務をしなかったために賃金の手取額が減り、それが借金等の返済に影響を与え精神状態も悪化し他所での収入の獲得のために出社しなくなったのであり、長期間欠勤に当たり診断書の提出もなく、その後体調が復した後も欠勤の事情を明らかにすることがなかったのであり、YがこのようなXの状況を職場放棄とみなして行った解雇は解雇権の濫用とは言い難く有効であるとして、Xの請求がすべて棄却された事例。
参照法条 労働基準法2章
労働基準法89条3号
体系項目 配転・出向・転籍・派遣 / 配転命令の根拠
解雇(民事) / 解雇事由 / 無届欠勤・長期欠勤・事情を明らかにしない欠勤
裁判年月日 2002年5月10日
裁判所名 大阪地
裁判形式 判決
事件番号 平成12年 (ワ) 7325 
裁判結果 棄却
出典 労経速報1809号22頁
審級関係
評釈論文
判決理由 〔配転・出向・転籍・派遣-配転命令の根拠〕
 使用者が包括的な配転命令権を有する場合には、業務上の必要等に応じて自由な裁量により労働者の職務を決めることができるか、それは無制限に許されるものではなく、当該裁量権の行使が社会通念上著しく妥当性を欠く等の場合には権利の濫用として無効となると解すべきであり、当該配転命令が権利の濫用となるか否かは、業務上の必要性の程度と配置転換によって労働者が被る不利益の程度とを比較衡量して判断すべきである。
 (二) 上記認定事実によれば、被告は、原告による配車が結果的に乗務員に不公平感を与える内容であったため、原告を配置換えすることとし、原告を入社当時従事していた乗務員に配転し、さらに、乗務員と配車係とでは賃金の体系が異なるため、原告が従前と同じ程度の賃金を得ることができるようなコースを指定し、原告もこれを了承して乗務員としての勤務についたのであって、本件配転命令は、業務上の必要性があったといえるし、また、原告に生じる不利益についても考慮されたものであるから、本件配転命令は、被告の配転命令権の範囲内のものであり、これを配転命令権の濫用ということはできない。〔中略〕
〔解雇-解雇事由-無届欠勤・長期欠勤・事情を明らかにしない欠勤〕
 原告は、本件配転命令を了承して乗務員として勤務につきながら、結局のところ、実際乗務員として勤務してみると、従前の配車係と比べて職務内容がきつかったために、名古屋コースに乗務せず、また、そのため、賃金の手取額が配車係のときよりも減ったために、借金等の返済に影響を与え、精神的にもうつ状態となり、他所で収入を得るため被告に出社しなくなったのであるし、また、長期間欠勤するにあたって、被告に対し、診断書を提出することもなく、さらには、出勤が可能な体調に復した後も欠勤の事情も明らかにすることがなかったのであるから、被告がこのような原告の状況を職務放棄とみなして行った本件解雇は解雇権の濫用とは言い難く、本件解雇は有効というべきである。