全 情 報

ID番号 08115
事件名 損害賠償請求事件
いわゆる事件名 JR東日本(新宿駅介助職員安全配慮義務)事件
争点
事案概要 重度の身体障害を有するXが、駅構内において、旅客鉄道事業等を目的とする株式会社Yの駅員の介助を受けたところ、同駅員Aがホームで原告の車いすをブレーキを掛けずに一時放置したため、車いすが線路に向かって動き出し、極度の恐怖を感じさせられ、精神的苦痛を被った等として、Yに対し、旅客運送契約上の安全配慮義務違反または不法行為に基づく損害賠償を求めたケースで、YはXとの間で介助業務を含む旅客運送契約を締結したものであり、車いす利用者対応の専門職員を配置した新宿駅においては、乗客に対する安全配慮義務の一つとして、必要な介助を行うことを契約上の債務として自ら負担したものである旨認定し、旅客運送契約の履行補助者であるAに債務不履行(安全配慮義務違反)がある等として、Xの請求が一部認容された事例。
参照法条 民法415条
体系項目 労働契約(民事) / 労働契約上の権利義務 / 安全配慮(保護)義務・使用者の責任
裁判年月日 2003年2月5日
裁判所名 東京地
裁判形式 判決
事件番号 平成13年 (ワ) 24052 
裁判結果 一部認容、一部棄却(控訴)
出典 タイムズ1140号155頁/労働判例863号71頁/第一法規A
審級関係 控訴審/08186/東京高/平15. 6.11/平成15年(ネ)1152号
評釈論文
判決理由 〔労働契約-労働契約上の権利義務-安全配慮(保護)義務・使用者の責任〕
 被告は、少なくとも車いす利用者対応の専門職員を配置したB駅においては、介助者なしの手押し型の車いす利用者と旅客運送契約を締結した場合には、必要な介助を行うことを同契約上の債務、すなわち乗客に対する安全配慮義務の一つとして、自ら負担したものと認めるのが相当である。
 被告は、車いす利用者への介助を「努力の一環」であると主張し、また、車いすの利用者も、自ら手配した介助者を同行するなど自己の安全の確保に努めるべきであり、障害のため電動式車いすの操作さえ困難な者は原則として移動中の全行程を通じて介助者を同行すべきであるなどと前記のとおり主張する。確かにこれらの主張は、一般論としては、必ずしも誤りと断ずることはできないが、現に、重度の障害を有して、特殊な車いすに乗り、車いすを自由に操作することができない者であると容易に見て取れる原告に対し、乗車を拒否せずに、Aのような立場にある者が前記認定の経緯による介助を行っている以上、その介助は、駅員の自由意思に基づく事実上のサービスであるとか、いわゆるボランティアとしての自発的行為であると評価することはできず、被告が乗客との間で介助業務を含む旅客運送契約を締結したものと認めるのが相当である。
 (2) そして、Aが、車いすの介助を主な職務としており、毎日多数の介助を行っているいわば専門職員であることに、前記〔1〕ないし〔8〕の事実を合わせ考慮すると、本件の場合、Aは、単身で車いすに乗って移動している原告の介助を引き受けた以上は、他の介助者に引き継がないまま車いすの傍らから離れるときは、当然にブレーキを掛けるか、又は既にブレーキが掛かっているのか、あるいは原告が自分でブレーキを掛けるのかを確認する旅客運送契約上の債務(安全配慮義務)を負っているというべきであり、これは、一般の駅員がたまたま車いすの利用者を見つけて手助けをした場合や、あるいは一般の乗客がボランティアとして車いす利用者の介助をした場合とは法律関係が異なるというべきである。したがって、このような旅客運送契約の履行補助者と位置付けられるAは、C線9番線ホームにおいても、また、中央東口改札外においても、ブレーキを掛けたり、前記確認をすることを一切怠っている点において、債務不履行(安全配慮義務違反)があるというべきである。