全 情 報

ID番号 08120
事件名 未払い一時金請求事件
いわゆる事件名 コープこうべ事件
争点
事案概要 生活協同組合Yに勤務するXら(47名)が、Yの希望退職優遇制度の適用を申請して退職した際、夏季賞与が支給されなかったため、Yに対し、賞与支給対象期間を継続勤務とすることを賞与の支給要件とする給与規定の定めが公序良俗に違反して無効であると主張して、夏季賞与等の支払を求めたケースで、賞与は収益分配や功労報償としての性格をも併せ持つものであり、賞与支給対象期間中の職員の勤務状態等を全体として評価した上で、支給されるものであるという賞与の性格に合致する継続勤務要件は一定の合理性を有するものというべきであり、継続勤務要件を満たさないXらとの関係で継続勤務要件が公序良俗に違反して無効であるとはいえないとし、Xの請求が棄却された事例。
参照法条 労働基準法11条
労働基準法3章
体系項目 賃金(民事) / 賞与・ボーナス・一時金 / 賞与請求権
裁判年月日 2003年2月12日
裁判所名 神戸地
裁判形式 判決
事件番号 平成13年 (ワ) 26 
裁判結果 棄却(控訴)
出典 労働判例853号80頁
審級関係
評釈論文
判決理由 〔賃金-賞与・ボーナス・一時金-賞与請求権〕
 被告の職員が被告に対して夏季賞与を請求するためには、夏季賞与の支給対象期間を継続勤務し、かつ、同期間中の勤務状態等に対する人事考課により賞与支給ランク別係数が定められて賞与の算定基礎給の額が確定することを要するものと解される。
 これを本件についてみると、前記争いのない事実等(1)アによれば、原告らは、いずれも夏季賞与の支給対象期間満了前である平成12年3月15日又は同年4月15日、被告を退職したというのであり、継続勤務要件を満たさないから、原告らの労働契約に基づく夏季賞与の請求は、いずれも理由がない。〔中略〕
〔賃金-賞与・ボーナス・一時金-賞与請求権〕
 賞与は、労働の対償としての性格を有するものであるが、他方、前記認定のとおり、賞与は生協事業の状況及び職員の勤務状態を考慮して支給するものとされ、賞与の算定基礎給の額を定めるためには賞与支給対象期間中の職員の勤務状態等に対する人事考課が不可欠であることからすると、賞与は、収益分配や功労報奨としての性格をも併せ持つものであり、個々の労働に応じて支給される通常の賃金とは異なり、賞与支給対象期間中の職員の勤務状態等を全体として評価したうえで支給されるものであるということができる。
 このような賞与の性格に合致する継続勤務要件は一定の合理性を有するものというべきであり、賞与支給の基準を明確に定める必要性があることをも考慮すると、継続勤務要件を満たさない原告らとの関係で継続勤務要件が公序良俗に違反して無効であるとはいえない。
 もっとも、定年退職した者等退職日を任意に選択することができない職員に対し、継続勤務要件を満たさないことを理由に労働の対償としての性格を有する賞与を支給しないのは公序良俗に違反するとの議論もあり得るところであるが、原告らは、自らの意思に基づいて本件制度の適用を申請し、被告を退職したものであり、本件制度の適用を申請せずに継続勤務要件を満たして夏季賞与の支給を受けることもできたのであるから、退職日を任意に選択することができなかったとはいえない。また、前記争いのない事実等(3)によれば、本件制度においては、原則として、退職日が夏季賞与の支給対象期間満了前である平成12年4月15日と定められていたというのであり、本件制度の適用を申請する職員は、継続勤務要件を満たして退職することはできなかったのであるが、これは、被告と被告の職員を代表すると推認されるA労働組合との間で締結された本件協定により定められたものであるから、被告が本件制度による退職日を夏季賞与の支給対象期間満了前に定めることにより、原告らの賞与に対する期待権を一方的に剥奪したとみることはできない。〔中略〕
〔賃金-賞与・ボーナス・一時金-賞与請求権〕
 被告が夏季賞与の支給を含むすべての点について原告らを定年退職の場合と同様に扱う意思であったと認めることはできないから、被告が賞与支給対象期間中に定年退職した者に対しても、同期間の2分の1以上継続勤務していれば、賞与を日割計算で支払うという取扱いが労使慣行として成立しているか否かについて判断するまでもなく、上記合意が成立していたと認めることはできず、他にこれを認めるに足りる証拠はない。