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ID番号 08148
事件名 著作権使用差止請求上告事件
いわゆる事件名 エーシーシープロダクション製作スタジオ(著作権使用差止請求)事件
争点
事案概要 アニメーション等の企画、撮影等を業とする株式会社Yスタジオで十数枚の図画を製作した中国国籍を有するデザイナーXが、Yとの間に著作者名の表示、著作権に関し、意見の対立が生じたため、Yとの間にキャラクターデザイナーとしての請負ないし準委任契約を締結していたとして、その著作権を主張し、〔1〕本件図画を使用したアニメーション作品の頒布、頒布のための広告および展示の差止めと、〔2〕1,500万円の損害賠償を請求したケースの上告審で、原審は一部の期間を除いてXY間に雇用契約が成立しておらず、したがってYを著作権法第15条1項に基づく著作権者と認めることはできないとして、Xの請求を一部認容したが、これに対して最高裁は上記原審の判断は著作権法第15条の解釈適用を誤るものとして、Y敗訴の部分が破棄されて原審に差し戻された事例。
参照法条 著作権法15条1項
労働基準法2章
体系項目 労働契約(民事) / 労働契約上の権利義務 / 著作権
裁判年月日 2003年4月11日
裁判所名 最高二小
裁判形式 判決
事件番号 平成13年 (受) 216 
裁判結果 破棄差戻
出典 時報1822号133頁/タイムズ1123号94頁/裁判所時報1337号4頁/労働判例849号23頁/労経速報1845号24頁
審級関係 差戻控訴審/東京高/平16. 1.30/平成15年(ネ)2088号
評釈論文 岡邦俊・JCAジャーナル50巻9号62~65頁2003年9月/岩出誠・労働判例852号5~10頁2003年10月1日/作花文雄・知財管理54巻8号1211~1215頁2004年7月/大家重夫・発明101巻5号80~89頁2004年5月/大山盛義・法律時報76巻7号130~133頁2004年6月
判決理由 〔労働契約-労働契約上の権利義務-著作権〕
 著作権法15条1項は、法人等において、その業務に従事する者が指揮監督下における職務の遂行として法人等の発意に基づいて著作物を作成し、これが法人等の名義で公表されるという実態があることにかんがみて、同項所定の著作物の著作者を法人等とする旨を規定したものである。同項の規定により法人等が著作者とされるためには、著作物を作成した者が「法人等の業務に従事する者」であることを要する。そして、法人等と雇用関係にある者がこれに当たることは明らかであるが、雇用関係の存否が争われた場合には、同項の「法人等の業務に従事する者」に当たるか否かは、法人等と著作物を作成した者との関係を実質的にみたときに、法人等の指揮監督下において労務を提供するという実態にあり、法人等がその者に対して支払う金銭が労務提供の対価であると評価できるかどうかを、業務態様、指揮監督の有無、対価の額及び支払方法等に関する具体的事情を総合的に考慮して、判断すべきものと解するのが相当である。
 (2) これを本件についてみると、上述のとおり、被上告人は、1回目の来日の直後から、上告人の従業員宅に居住し、上告人のオフィスで作業を行い、上告人から毎月基本給名目で一定額の金銭の支払を受け、給料支払明細書も受領していたのであり、しかも、被上告人は、上告人の企画したアニメーション作品等に使用するものとして本件図画を作成したのである。これらの事実は、被上告人が上告人の指揮監督下で労務を提供し、その対価として金銭の支払を受けていたことをうかがわせるものとみるべきである。ところが、原審は、被上告人の在留資格の種別、雇用契約書の存否、雇用保険料、所得税等の控除の有無等といった形式的な事由を主たる根拠として、上記の具体的事情を考慮することなく、また、被上告人が上告人のオフィスでした作業について、上告人がその作業内容、方法等について指揮監督をしていたかどうかを確定することなく、直ちに3回目の来日前における雇用関係の存在を否定したのである。そうすると、原判決には、著作権法15条1項にいう「法人等の業務に従事する者」の解釈適用を誤った違法があるといわざるを得ず、諭旨は理由がある。