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ID番号 08216
事件名 労災就学援護費不支給処分取消請求上告事件
いわゆる事件名 中央労基署長(労災就学援護費)事件
争点
事案概要 業務上の事由により死亡したフィリピン国籍の労働者の妻で、労働者災害補償保険法に基づく遺族補償年金の受給権者であるXが、Yに対し、外国の大学に進学した子の学資に係る労災就学援護費の支給申請をしたところ、Yから、その外国の大学が、学校教育法第1条に定める学校等に当たらないとし、労災就学援護費を支給しない旨の決定を受けたため、その取消しを求めた事案で、原審、原々審は、労災法23条の趣旨からして労災就学援護費の給付は、労働福祉事業としての給付であることから、その支給不支給を行政処分として扱うことは同条2項による委任の範囲を超えるとし、Xの本件処分取消請求を却下したが、最高裁は、労働基準監督署長の行う労災就学援護費の支給又は不支給の決定は、法を根拠とする優越的地位に基づいて一方的に行う公権力の行使であり、被災労働者又はその遺族の権利に直接影響を及ぼす法的効果を有するものであるから、抗告訴訟の対象となる行政処分に当たるものと解するのが相当であるとし、原判決を破棄し、第1審判決を取り消し、東京地方裁判所に差し戻した事例。
参照法条 労働者災害補償保険法29条1項
体系項目 労災補償・労災保険 / 補償内容・保険給付 / リハビリ、特別支給金等
裁判年月日 2003年9月4日
裁判所名 最高一小
裁判形式 判決
事件番号 平成11年 (行ヒ) 99 
裁判結果 破棄差戻
出典 時報1841号89頁/タイムズ1138号61頁/裁判所時報1347号1頁/労働判例858号48頁
審級関係 控訴審/08031/東京高/平11. 3. 9/平成10年(行コ)54号
評釈論文 下山憲治・法学セミナー49巻6号114頁2004年6月/間史恵・法律のひろば57巻3号69~75頁2004年3月/嵩さやか・月刊法学教室283号104~105頁2004年4月
判決理由 〔労災補償・労災保険-補償内容・保険給付-リハビリ、特別支給金等〕
 労災就学援護費に関する制度の仕組みにかんがみれば、法は、労働者が業務災害等を被った場合に、政府が、法第3章の規定に基づいて行う保険給付を補完するために、労働福祉事業として、保険給付と同様の手続により、被災労働者又はその遺族に対して労災就学援護費を支給することができる旨を規定しているものと解するのが相当である。そして、被災労働者又はその遺族は、上記のとおり、所定の支給要件を具備するときは所定額の労災就学援護費の支給を受けることができるという抽象的な地位を与えられているが、具体的に支給を受けるためには、労働基準監督署長に申請し、所定の支給要件を具備していることの確認を受けなければならず、労働基準監督署長の支給決定によって初めて具体的な労災就学援護費の支給請求権を取得するものといわなければならない。
 そうすると、労働基準監督署長の行う労災就学援護費の支給又は不支給の決定は、法を根拠とする優越的地位に基づいて一方的に行う公権力の行使であり、被災労働者又はその遺族の上記権利に直接影響を及ぼす法的効果を有するものであるから、抗告訴訟の対象となる行政処分に当たるものと解するのが相当である。