全 情 報

ID番号 : 08603
事件名 : 地位確認等請求事件
いわゆる事件名 : トップ(カレーハウスココ壱番屋店長)事件
争点 : 2度にわたり解雇されたカレーチェーンの店長が地位確認、未払賃金等の支払を求めた事案(労働者一部勝訴)
事案概要 : カレーチェーン経営会社の店長が、勤務態度不良等を理由に懲戒解雇され、地裁が地位保全の仮処分命令を発した後、不就労を理由に再度解雇されたため、地位の確認、未払い賃金、慰謝料等の支払を求めた事案である。 大阪地裁はまず、1度目の懲戒解雇について、懲戒解雇という制裁に値する非難可能性のある事由はなく、解雇権の濫用であり、無効とした。そして、2度目の普通解雇では、解雇判断に至った理由として、独立を巡る問題だけでなく、勤務態度や他の従業員に対する指導、フライヤーの中に雑巾を落としたのにそのまま調理をしたことが投書されたりしたことなどの事情が大きく影響していることが認められるとして、これを権利の濫用であると認めることはできず、解雇は有効とした。その上で、契約期間の未払賃金を算定し、割増賃金については、店長は管理監督者であったとする会社の主張を退けて割増を認めたが、慰謝料請求については、解雇による精神的損害は慰謝料の支払を認めなければならない程の違法性があったとはいえず、独立できなかったことの精神的損害は会社の責任ではないとして否認した。
参照法条 : 労働基準法2章
労働基準法41条
労働基準法89条
労働基準法37条
労働基準法114条
体系項目 : 懲戒・懲戒解雇/懲戒権の濫用/懲戒権の濫用
解雇(民事)/解雇権の濫用/解雇権の濫用
就業規則(民事)/就業規則の周知/就業規則の周知
賃金(民事)/賃金請求権と考課査定・昇給昇格・降格・賃金の減額/賃金請求権と考課査定・昇給昇格・降格・賃金の減額
労働時間(民事)/法内残業/割増手当
労働契約(民事)/労働契約上の権利義務/使用者に対する労災以外の損害賠償
雑則(民事)/付加金/付加金
配転・出向・転籍・派遣/配転命令権の濫用/配転命令権の濫用
懲戒・懲戒解雇/懲戒事由/職務懈怠・欠勤
懲戒・懲戒解雇/懲戒事由/暴力・暴行・暴言
解雇(民事)/解雇事由/業務命令違反
裁判年月日 : 2007年10月25日
裁判所名 : 大阪地
裁判形式 : 判決
事件番号 : 平成18(ワ)1966
裁判結果 : 一部認容、一部棄却(控訴)
出典 : 労働判例953号27頁
審級関係 :
評釈論文 :
判決理由 : 〔懲戒・懲戒解雇-懲戒権の濫用-懲戒権の濫用〕
〔解雇(民事)-解雇権の濫用-解雇権の濫用〕
〔就業規則(民事)-就業規則の周知-就業規則の周知〕
〔賃金(民事)-賃金請求権と考課査定・昇給昇格・降格・賃金の減額-賃金請求権と考課査定・昇給昇格・降格・賃金の減額〕
〔労働時間(民事)-法内残業-割増手当〕
〔労働契約(民事)-労働契約上の権利義務-使用者に対する労災以外の損害賠償〕
〔雑則(民事)-付加金-付加金〕
〔配転・出向・転籍・派遣-配転命令権の濫用-配転命令権の濫用〕
〔懲戒・懲戒解雇-懲戒事由-職務懈怠・欠勤〕
〔懲戒・懲戒解雇-懲戒事由-暴力・暴行・暴言〕
〔解雇(民事)-解雇事由-業務命令違反〕
(1) 本件第1次解雇について〔中略〕  エ 本件第1次解雇における権利濫用  前記ウで検討したところによると、被告が懲戒解雇事由として主張する事実は、いずれも、その該当性を認めることのできないものか、被告の就業規則上、これに該当すると認めることはできるものの、懲戒処分としての解雇を基礎づけるに足りるだけの事由とは言い難いものであり本件第1次解雇は、解雇権を濫用するもので、無効というべきである。〔中略〕 (3) 本件第2次解雇〔中略〕   (エ) まとめ  以上によると、本件第2次解雇が解雇権の濫用であるとする原告の主張を認めることはできず、原告は、本件第2次解雇によって解雇されたというべきである。  なお、原告は、本件就労命令に理由なく従わなかったのであるから、その後の賃金請求権は発生していないと考えるのが相当である。 3 等級基準表改定に基づく減給について  平成16年4月にBS社員等級基準表を改定したことは、前記1(3)イのとおりであり、その結果、3等級の基本給が18万円から15万円となったことが認められる(原告が、従前の基本給が20万円と主張するのは誤りと思われる。)。  また、同等級基準表によると、その他の手当も減額され、等級基準表上の支給総額は5万円の減額となっていることが認められるが〔中略〕、賃金台帳(〈証拠略〉)によると、そのころの実際の支給総額の減少は認められない。  ところで、上記等級基準表の改定の内容については、少なくとも、原告はこれを容易に知ることができたことが窺われ、原告を含め、被告の従業員が、特段の異議を申し述べた形跡もなく、上記等級基準表の改定は、同意されたと同視することができる。  以上によると、BS等級基準表の改定が無効とはいえない。 4 降格に基づく減給について〔中略〕  以上のとおり、本件等級の降格は、その理由に合理性を認めることができず、原告本人の同意も認められない以上、無効と言わざるを得ない。〔中略〕 6 割増賃金〔中略〕  そうすると、上述した原告の労働時間の算出方法は、一応の合理性を有しているというべきであり、これに証拠(原告本人)及び弁論の全趣旨を総合すると、原告の上記期間における実労働時間、時間外労働時間、深夜労働時間、休日労働時間は、別紙6の1ないし6の17の各年月の各欄記載のとおり認定するのが相当である[中略]。もっとも、1週間単位の時間外労働時間の合計については、上記各欄において認定した時間数を超えることは明らかなので、結局、時間外労働時間の合計としては、原告が別紙3で主張する時間外労働時間(別紙6の1ないし6の17の欄外に記載)の限度で認定するのが相当である。〔中略〕 (3) 付加金  被告は、BS社員に対し、所定労働時間として10時間を命じ(36協定の存在の主張、立証はない。)、所定休日は週1日であるため、1週間の所定労働時間は50時間にも及び、しかも、実際の労働時間はこれを超えるものであることが認められる。  その他、上記(1)で認定した事実に照らすと、被告の従業員に対する労働時間の管理内容は悪質というべきであり、上記認定の割増賃金と同額の付加金の支払を命じるのが相当である。〔中略〕 7 慰謝料請求権の存否 (1) 解雇による精神的損害  原告は、不当な解雇により精神的苦痛を受けたと主張する。  確かに、前記2のとおり、本件第1次解雇は無効というべきであるが、懲戒解雇としては、懲戒事由の存在や程度が、懲戒解雇を根拠づけるに不十分であるとされたものであり、後にされた本件第2次解雇が有効であると認められたこと、その理由は、本件第1次解雇の解雇事由も含めたものであることを考えると、本件第1次解雇が無効であることを理由として慰謝料の支払を認めなければならない程度の違法性があったということはできない。 (2) 独立妨害による精神的損害〔中略〕  しかし、前記1(2)で述べたとおり、3等級に進級したからといって、独立が承認されるわけではなく、相当に厳しい競争があることが推認される。そして、前記1(4)、(5)で述べたとおり、原告の場合も、平成12年6月に独立承諾書が提出され、壱番屋本部から調査があった際、何かアピールするものを求められたにもかかわらず、これに応えることができず、そのうち、原告の他の従業員に対する暴行が発覚し、しかも、それが単発的なものではなく、常習性を窺わせる内容であったため、原告の独立が壱番屋本部の内部でも非常に厳しいものとなったことが窺える。  したがって、その後、長期間にわたって、独立が認められなかったことを被告の責任にすることはできないというべきである。  もっとも、仮に、上記のとおり、原告の独立が非常に難しくなったのであれば、将来の身の振り方を早く決めさせるためにも、早期に、状況を明確に伝えておくことが望ましいというべきである。特に、本件では、極めて独立の見込みが薄くなっているにもかかわらず、長期間、BS社員としての努力を強い続けた結果となったことが指摘できる。しかし、その原因は、もとはといえば原告にあること、また、全く独立が不可能と決定したわけでない以上、独立への努力を継続させたことが違法とはいえない。