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ID番号 : 08845
事件名 : 解雇無効確認等請求控訴事件
いわゆる事件名 : 東芝事件
争点 : 業務上疾病による休業中に解雇された元従業員が地位確認、賃金、慰謝料等を求めた事案(労働者一部勝訴)
事案概要 :  電気機械器具製造会社に解雇された従業員が、解雇は、業務上の疾病であるうつ病に罹患して休業していたXに対してされた違法無効なものであるとして、地位確認、賃金の支払、安全配慮義務違反による慰謝料等を求めた事案の控訴審である。  第一審東京地裁は、概ね請求を認め、地位の確認、賃金の支払、債務不履行による慰謝料の支払いを命じた。会社が控訴。元労働者も敗訴部分について附帯控訴し、請求を追加。  第二審東京高裁は、業務上の疾病として本件うつ病を罹患した元従業員の状況は、使用者の責めに帰すべき事由により労働者が労務提供の意思を形成し得なくなった場合に当たるとして、あらためてうつ病と業務との間に因果関係を認め、雇用上の地位の確認、賃金、遅延損害金、治療費、診断書作成料、交通費、慰謝料、弁護士費用、遅延損害金、さらには休業補償金の支払いを命じつつ、一方、賞与相当額の支給金などを否定し、また賃金、傷病手当金、傷病手当付加金、延長付加金と休業補償金との相殺を認定し、原判決を変更した。
参照法条 : 民法415条
民法536条
民法709条
労働基準法19条
労働者災害補償保険法12条の8
体系項目 : 労働契約(民事) /労働契約上の権利義務 /使用者に対する労災以外の損害賠償請求
解雇(民事) /解雇事由 /病気
解雇(民事) /解雇権の濫用 /解雇権の濫用
裁判年月日 : 2011年2月23日
裁判所名 : 東京高
裁判形式 : 判決
事件番号 : 平成20(ネ)2954
裁判結果 : 一部取消、一部控訴棄却(基本請求)、一部却下、一部認容、一部棄却(追加請求)
出典 : 労働判例1022号5頁/労働経済判例速報2101号3頁/判例時報2129号121頁
審級関係 : 一審/東京地平成20.4.22/平成16年(ワ)第24332号
評釈論文 : 牛嶋勉・労働経済判例速報2101号2頁2011年4月30日徳住堅治・ジュリスト1435号141~143頁2011年12月15日幡野利通・労働法令通信2264号20~21頁2011年11月8日
判決理由 : 〔労働契約(民事)‐労働契約上の権利義務‐使用者に対する労災以外の損害賠償請求〕
〔解雇(民事)‐解雇事由‐病気〕
〔解雇(民事)‐解雇権の濫用‐解雇権の濫用〕
 当裁判所は、第1審原告の請求は、雇用上の地位の確認、平成13年9月分から平成16年8月分までの未払賃金合計970万8600円及び平成16年10月(同年9月分)から本判決確定の日まで毎月25日限り月額26万9683円の賃金並びにこれらに対する当該月の26日から完済に至るまでの商事法定利率年6分の割合による遅延損害金、治療費13万8800円、診断書作成料4万4960円、交通費16万3440円、慰謝料320万円、弁護士費用130万円及び見舞金240万円並びにこれらに対する民法所定年5分の割合による遅延損害金の支払を求める限度で理由があり、その余は理由がないと判断する。その理由は、次のとおり付け加えるほか、原判決「事実及び理由」中の第3の1及び2(更正決定後のもの)記載のとおりであるから、これを引用する。〔中略〕
 「ウ そこで、第1審原告が選択的に請求する安全配慮義務違反による債務不履行又は不法行為に基づく休業損害について検討する。〔中略〕
 上記の本件鬱病の発病及びその増悪に寄与した諸事情は、民法418条(及び722条2項)の定める過失相殺に当たりしん酌すべき事情又は上記の規定を類推適用して斟酌すべき心因的な事情であり、これらの諸事情をしん酌し、第1審被告において賠償すべき損害の額を全損害額の8割と認めるのが相当である。
 そうすると、第1審原告は、第1審被告に対し、上記の平成13年9月分から平成16年8月分までの合計1705万7949円の未払休業損害金、平成16年10月(同年9月分)から本判決確定の日までの月額47万3831円の休業損害金につき、過失相殺及び素因減額をした後の1364万6359円及び月額37万9064円を請求することができることになる。」〔中略〕
 第4 結論
 以上によれば、当審における訴えの追加的変更前の第1審原告の請求は、雇用上の地位の確認、平成16年10月(同年9月分)から本判決確定の日まで毎月25日限り月額26万9683円の賃金、平成13年9月分から平成16年8月分までの未払賃金合計511万7382円及びこれに対する遅延損害金、治療費13万8800円、診断書作成料4万4960円、交通費16万3440円、慰謝料320万円及び弁護士費用130万円並びにこれらに対する遅延損害金の支払を求める限度で理由があり、その余は理由がなく、第1審原告及び第1審被告の控訴はいずれも一部理由があるから、原判決を変更することとし(なお、原判決は、賃金請求以外の金銭請求につき、債務不履行である安全配慮義務違反による損害賠償金及びこれに対する訴状送達の日から支払済みまでの遅延損害金に係る請求を認容しているが、安全配慮義務違反による損害賠償債務は期限の定めのない債務であるから、平成16年12月6日付け訴状訂正申立書及び平成19年9月21日付け請求の趣旨原因変更申立書により追加された遅延損害金の請求のうち、訴状送達の日から上記各書面送達の日までの間の遅延損害金の支払を求める部分は理由がない。しかし、第1審原告は、選択的に不法行為による損害賠償請求をしており、同請求権に係る遅延損害金は不法行為の日から発生することから、不法行為による損害賠償請求権に係る上記期間中の遅延損害金の請求として、これを認容すべきことになる。)、また、第1審原告が当審で追加した請求中、本判決確定の日以降の賃金及びこれに対する遅延損害金の支払を求める部分は、訴えの利益がなく不適法であるから、これを却下することとし、その余の請求は、平成16年10月から本判決確定の日までの賃金に対する遅延損害金、平成12年9月分から平成16年8月分までの未払賃金の一部459万1218円及び見舞金の一部240万円並びにこれらに対する遅延損害金の支払を求める限度で理由があるから、その限度でこれを認容し、その余は理由がないから、これを棄却することとし、仮執行宣言については、訴訟費用を除いて相当と認め、主文のとおり判決する。