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ID番号 09069
事件名 地位確認等請求控訴事件
いわゆる事件名 NHK神戸放送局(地域スタッフ)事件
争点 NHK受信料集金人の労働者性が問われた事案(労働者敗訴)
事案概要 (1) 控訴人Y(日本放送局、被告)との間においてYの放送受信料の集金や放送受信契約の締結等を内容とする有期委託契約(本件契約)を継続して締結してきた被控訴人X(原告)が、Yから本件契約を途中解約されたことについて、本件契約は労働契約であり、上記解約(本件解約)は、労働契約法に基づかない無効な解雇であると主張して、地位確認、賃金及びこれに対する遅延損害金の支払、ならびに不当解雇の不法行為に基づく、慰謝料等三三〇万円の損害賠償金及びこれに対する遅延損害金の支払を求め提訴したもの。
(2) 大阪地裁は、Xの労働者性を肯定し、解雇は違法であるとしたが、本件契約は平成二五年三月三一日の経過をもって終了しているとして、地位確認の訴えを確認の利益がないとして却下し、賃金請求を一部認容したが、大阪高裁はXの労働者性を否定して原判決を取消し、Xの請求を棄却した。
参照法条 労働基準法9条
労働契約法2条
労働契約法17条
体系項目 労基法の基本原則(民事)/労働者/労働者の概念
労基法の基本原則(民事)/労働者/委任・請負と労働契約
解雇(民事)/解雇権の濫用/解雇権の濫用
労働契約/労働契約上の権利義務/使用者に対する労災以外の損害賠償
裁判年月日 2015年9月11日
裁判所名 大阪高
裁判形式 判決
事件番号 平成26年(ネ)1905号
裁判結果 原判決一部取消
出典 判例時報2297号113頁
労働判例1130号22頁
労働経済判例速報2264号3頁
審級関係 一審  平成26年6月5日/神戸地方裁判所/第6民事部/判決/平成24年(ワ)1560号
上告、上告受理申立
評釈論文
判決理由 〔労基法の基本原則(民事)/労働者/労働者の概念〕
〔労基法の基本原則(民事)/労働者/委任・請負と労働契約〕
〔解雇(民事)/解雇権の濫用/解雇権の濫用〕
〔労働契約/労働契約上の権利義務/使用者に対する労災以外の損害賠償〕
 〈1〉本件契約においては、諾否の自由の問題を取り上げるのは相当でなく、〈2〉Yのスタッフに対する助言指導は、業績の不振を契機として主として稼働日数や稼働時間等についてされるものであり、限定された場面におけるものということができる。〈3〉本件契約上、一か月の稼働日数や一日の稼働時間は、スタッフの判断で自由に決めていくことができ、実際の稼働をみても、スタッフにより、時期により様々である。目標値はYが設定するとしても、稼働時間に対する拘束性は強いものとはいえない。場所的拘束性も、訪問対象の世帯等がその地域内にあるというだけで、訪問以外の場面ではその地域内での待機を強いられるわけではない。〈4〉本件契約の事務費は、基本給とまではいえず、そのほかの給付も出来高払の性格を失っていない。〈5〉本件契約においては、第三者への再委託が認められており、実際にも再委託制度を利用している者がいた。〈6〉兼業は許容され、就業規則や社会保険の適用はない。なお、〈7〉本件契約による業務を遂行する上で必要な機材等はYによって貸与されている。
 このように〈2〉から〈6〉まで、とりわけ、稼働日数や稼働時間が裁量に任されており、時間的な拘束性が相当低く、〈5〉のとおり、第三者への再委託が認められていることに着目すれば、〈7〉の事情を総合しても、本件契約が、労働契約的性質を有すると認めることはできない。
 (8) 本件契約が労働契約と認められないのであるから、Xの、労働者としての地位の確認を求める請求は理由がないことになる。
 また、Xは、本件契約が労働契約と認められなかった場合における契約終了の不当性については争点としないとしているから、本件契約が労働契約であることを前提とする賃金の支払請求及び不当解雇を理由とする慰謝料等の支払請求も理由がないことに帰する。