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ID番号 09083
事件名 退職手当請求事件
いわゆる事件名 中津市(特別職職員)事件
争点 特別職職員への退職手当支給が問われた事案(労働者敗訴)
事案概要 (1) 上告人Y(被告、被控訴人(平成17年に被控訴人が編入した大分県下毛郡三光村(三光村)を含む。)の職員として勤務し退職した被上告人X(原告、控訴人)が、Yに対し、「中津市職員の退職手当に関する条例」(本件条例)に基づいて、退職手当1092万8632円及びこれに対する退職した日から1週間経過した日である平成24年4月8日から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払を求め提訴したもの。
(2) 大分地裁は、本件条例1条の「職員」とは一般職の職員をいい、特別職の職員を含まないというべきであるとしてXの請求を棄却したためXが控訴したところ、福岡高裁はXは一般職の職員に当たるというべきであるとしてXの控訴を認容したためYが上告したところ、最高裁は、Xは特別職の職員であり、本件条例は同項3号所定の特別職の職員には適用されないものと解すべきであるとして、原判決を破棄しXの請求を棄却した。
参照法条 地方公務員法3条
職員の退職手当に関する条例〔中津市〕1条、2条
体系項目 労基法の基本原則/労働者/非常勤国家公務員・地方公務員
裁判年月日 2015年11月17日
裁判所名 最高裁第三小法廷
裁判形式 判決
事件番号 平成26年(行ヒ)第129号
裁判結果 破棄自判(確定)
出典 労働判例1135号5頁
判例地方自治403号33頁
審級関係 控訴審 平成25年12月12日/福岡高等裁判所/第1民事部/判決/平成25年(行コ)27号
一審 平成25年3月15日/大分地方裁判所中津支部/判決/平成24年(ワ)80号
評釈論文 馬橋隆紀、幸田宏・判例地方自治406号4~9頁2016年5月
判決理由 〔労基法の基本原則-労働者-非常勤国家公務員・地方公務員〕
 本件条例が施行された当時の本件条例1条は、「中津市職員(市の経済から給与の支給を受けて常時勤務に服する者をいう…)」の退職手当に関する事項を定めることを目的とする旨を定めていたところ、昭和31年に、中津市特別職の職員の退職手当に関する条例(昭和31年X市条例第34号)が制定されたことに伴い、本件条例の適用対象となる者を「中津市職員(市の経済から給与の支給を受けて常時勤務に服する一般職の職員をいう…)」とする旨の改正がされて本件条例が一般職の職員のみに適用される旨が明確にされ、さらに、昭和38年に、本件条例の適用対象となる者を「市の経済から給料が支給される一般職(地方公務員法(昭和25年法律第261号)に規定する一般職をいう。)の職員」とする旨の改正がされた。そして、平成4年の本件条例の改正において、本件条例の適用対象となる者に係る規定の文言が、それまで「一般職…の職員」とあったものを「職員(地方公営企業労働関係法(昭和27年法律第289号)第3条第2項の職員及び単純な労務に雇用される一般職の職員を除く。)」と改められたものの、上記改正の際に中津市議会に提出された条例案には、国家公務員の退職手当支給率に準じるために所要の改正をすることが上記改正の理由である旨の記載がされているにとどまり、上記改正が地方公務員法3条3項所定の特別職の職員を本件条例の適用対象に加える趣旨によるものであったとの事情はうかがわれない。このような本件条例の改正の経緯等を勘案すれば、本件条例は同項3号所定の特別職の職員には適用されないものと解すべきである。
(3) 以上によれば、Xは、Yに対し、本件条例に基づく退職手当の支払を請求することはできないというべきである。