全 情 報

ID番号 09094
事件名 地位確認等請求事件
いわゆる事件名 シンワ運輸東京事件
争点 定年再雇用後の更新拒絶の有効性が問われた事案(労働者勝訴)
事案概要 (1) Y(被告)の従業員であったX(原告)が、定年退職後も引き続きYに再雇用されていたところ、Yから、再雇用契約の更新を不当に拒絶されたとして、Yに対し、労働契約上の権利を有する地位にあることの確認及び未払賃金の支払を求めるとともに、平成24年1月から平成25年10月までに稼働した分の未払割増賃金及び付加金の支払を求めた事案である。
(2) 東京地裁は、本件更新拒絶は不適法で無効であるとしてXの請求をすべて認容した。
参照法条 労働基準法38条
労働基準法114条
労働契約法19条
高年齢者等の雇用の安定等に関する法律9条
体系項目 解雇(民事)/短期労働契約の更新拒否(雇止め)
賃金(民事)/割増賃金/(3) 割増賃金の算定方法
裁判年月日 2016年2月19日
裁判所名 東京地裁
裁判形式 判決
事件番号 平成26年(ワ)965号
裁判結果 認容
出典 労働判例1136号58頁
審級関係 控訴
評釈論文
判決理由 〔解雇(民事)/短期労働契約の更新拒否(雇止め)〕
 Yが、Xについて、「規律遵守」及び「勤務態度」をいずれも「問題あり」として、更新拒絶に直結する評価をしたことは正当な評価とはいえず、いずれの点も、少なくとも「普通」(素点2点)にとどまるものと解するのが相当である。そうすると、本件更新拒絶当時のXの再雇用(更新)基準に基づく評価は、各項目が素点2点以上で、かつ、総合評価(素点合計)が12点以上になることから、更新基準を充足するものと認められ、本件更新拒絶は不適法で無効である。
〔賃金(民事)/割増賃金/(3) 割増賃金の算定方法〕
 Yが支給する運行時間外手当は、当該乗務員の運行によってYが得た運賃収入に車種や搬送物等に応じた一定の掛け率を乗じることによって算出されるものと認められるから、ある業務を、法定労働時間外や深夜時間帯等に行った場合と、そうではない通常の労働時間内に行った場合とで、支給される上記手当の額に違いはないといえ、そうすると、運行時間外手当が時間外労働等に係る割増賃金の性格を有する手当であるとは認められない。また、Xに毎月支給された運行時間外手当には、Xが通常の労働時間中に従事した業務に係る手当も当然に含まれているものと解されるが、支給された運行時間外手当のうち、通常の労働時間に従事した業務に係る手当の額と通常の労働時間外に従事した業務に係る手当の額とを判別することもできないから、結局、時間外労働等に係る割増賃金に当たる額も不明といわざるを得ない(通常の労働時間内に従事した業務において発生した手当が割増賃金に当たるということはできない。)。
 したがって、このような性格の運行時間外手当の支給によって、Xに時間外労働等に係る割増賃金が支払われたと認めることはできない。