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ID番号 10085
事件名 公務執行妨害事件/建造物侵入事件
いわゆる事件名 国鉄荒尾駅事件
争点
事案概要  公務執行妨害につき、助役に対する閉塞器操作の駅長命令は労基法違反であり、同助役の職務執行は違反として、公務執行妨害は成立しないとの弁護人の主張がなされた事例。
参照法条 労働基準法36条
労働基準法41条2号
刑法95条1項
体系項目 労働時間(刑事) / 8時間労働の原則
労働時間(刑事) / 時間外・休日労働
労働時間(刑事) / 法41条の適用除外 / 管理監督者
裁判年月日 1962年8月7日
裁判所名 福岡高
裁判形式 判決
事件番号 昭和37年 (う) 76 
裁判結果 破棄(確定)・有罪(懲役6か月・執行猶予2年)
出典 下級刑集4巻7・8合併号644頁
審級関係
評釈論文
判決理由 〔労働時間-8時間労働の原則〕
〔労働時間-時間外・休日労働〕
〔労働時間-法41条の適用除外-管理監督者〕
 よつて、A助役の該職務の執行が前記法条に所謂公務の執行といえるか、換言すると、B駅長のA助役に対する業務命令が違法なりや否やに付て按ずるに、原判決挙示の証拠によつて認められるA助役の始業及び終業の時刻が定められていて、時間外の就労に対し労働基準法(以下労基法と略称する)所定の超過賃金の支払がなされていたこと、管理職手当の支給を受けていないこと、国鉄荒尾駅の規模、同駅職員の数、助役の職務内容並びに数等諸般の事情を考察すると、A助役は公共企業体等労働関係法(以下公労法と略称する)第四条に基き非組合員に指定されており、運輸従事員制及び職務規定により、助役の服務は駅長の服務に関する規定により旨、及び駅長を補佐し又は代理する旨定められているとはいえ、出退社について厳格な制限を受けない者に該当するとは解し得ないので、労基法第四一条第二号所定の「監督若しくは管理の職にある者」とは認められないから、労基法第三六条の協定が締結されていなければ、駅長といえども、A助役に対して業務命令により時間外勤務に就かせることは、同法に違反するものというべきであり、国鉄当局と国鉄労働組合との間に当時右三六条協定が破棄された状態にあつたことが明らかな本件においては、B駅長のA助役に対する右業務命令は一見同法に違反するもののごとくでもある。
 しかしながら、列車事故の防止又は公企業たる列車の正常な運営を確保する必要がある場合、たとえば、天災、交通事故の発生、その他正常な運転に支障を来たす異常な事態に直面する等、避けることのできない事由によつて、臨時の必要がある場合には、その必要な限度において、労基法所定の労働時間を延長し、又は休日に労働させ得ることは、公労法第一条、労基法第三三条の法意に照し、当然の事理といわねばならない。