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ID番号 10152
事件名 労働基準法違反被告事件
いわゆる事件名 芸妓置屋「光本営業」事件
争点
事案概要  女子年少者を酒席に侍せしたことにつき、罰金刑に対し執行猶予とした原審の判断が量刑軽きにすぎるとして破棄自判された事例。
参照法条 労働基準法62条2項
労働基準法119条1号
体系項目 年少者(刑事) / 未成年者の危険有害業務
裁判年月日 1956年10月30日
裁判所名 東京高
裁判形式 判決
事件番号 昭和31年 (う) 1913 
裁判結果 有罪(罰金3,000円)
出典 東高刑時報7巻10号398頁
審級関係
評釈論文
判決理由 〔年少者-未成年者の危険有害業務〕
 本件労働基準法第六三条第二項、違反の罪のうち満一八才に満たない少年をその福祉に有害な業務に従事せしめる場合その使用者が利益をうけていないということはさして斟酌すべき事情とは認められないことは右法条が所論の如く年少者保護の規定であつて、児童の精神、肉体双方の健全な、成長、育生を確保する為のものである点から考えても明瞭である。
 又原判決は被告人は本件少年を雇入れたことにより万余の損害を蒙つている旨判示しているところ、成程被告人の原審公判供述によれば、所謂前借金三五、〇〇〇円の内六〇〇〇円返還されたのみで、その余は免除したというので、二九、〇〇〇円の損失を蒙つたが如くである。しかし、一方Aの司法警察員に対する供述によれば、同人が被告人方に雇われている期間中には合計約四四、〇〇〇円の稼高があつたことが認められるので、被告人の右損失を蒙つた旨の原審公判供述はたやすくは信用できないのである。而して被告人はAが満一八才未満で、芸妓として酒席に侍せしめることのできないものであることを熟知し乍ら雇入れたもので、たとえ右少年の実母等から雇入方を懇願されたからとて違法精神の欠如するものとの謗は免れない。
 その他被告人の性行、経歴、境遇等諸般の事情を綜合すれば、原判決が被告人に対し罰金刑に対し刑の執行を猶予したのはいささか量刑軽きにすぎたものと認められ、論旨は理由がある。