全 情 報

ID番号 10216
事件名 労働基準法違反事件
いわゆる事件名
争点
事案概要  労基法七五条、七六条および七七条違反と罪数の関係が争われた事例。
参照法条 労働基準法75条
労働基準法76条
労働基準法77条
労働基準法119条1号
体系項目 罰則(刑事) / 罪数
裁判年月日 1951年10月30日
裁判所名 東京高
裁判形式 判決
事件番号 昭和26年 (う) 684 
裁判結果 破棄自判,控訴棄却
出典 高裁刑特報25号20頁
審級関係
評釈論文
判決理由 〔罰則-罪数〕
 次に検察官の控訴趣意について案ずるに先立ち先づ職権により調査するに、原審は起訴にかかる第二の事実即ち、労働者Aが業務上傷害を被り医師の治療を受け労働をなしえなかつたに拘らず、被告人が、その療養費を負担せず休業補償を行わず、且つ右傷害に因る機能障害に対しても障害補償をしなかつたとの事実につき、療養費を負担しなかつたこと並びに障害補償をしなかつたことを有罪と認めたのみで、休業補償をしなかつた点については、何等判示するところがない。思うに原審は右第二の事実は包括一罪として起訴されたもので、その一部たる休業補償の点については犯罪の証明はないが、包括一罪の一部の証明がない場合であるからと言う理由で主文並びに理由中に判断を示さなかつたものと解せられる。しかし、使用者が労働者の業務上の傷害に対し療養費を負担せず休業補償、障害補償をもしなかつた場合は、各別に労働基準法第七十五条第七十六条第七十七条に違反し、それぞれ同法第百十九条第一号により処罰すべき犯罪が成立するものであつて、これを包括して一罪が成立するものと解すべきではない。従つてそのいずれかにつき証明なき場合に主文及び理由中にその判断をしないのは法令の解釈を誤つたもので、この法令の違反は判決に影響を及ぼすことが明らかであるから、原判決はこの点において破棄を免れない。