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ID番号 10236
事件名 労働基準法違反事件
いわゆる事件名 日本窯業事件
争点
事案概要  労基法三二条に違反した超過労働をなさしめたとして被告人が起訴された事例(有罪)。
参照法条 労働基準法32条
体系項目 労働時間(刑事) / 時間外・休日労働 / 時間外・休日労働の要件
裁判年月日 1950年6月20日
裁判所名 松江地
裁判形式 判決
事件番号
裁判結果 一部有罪(罰金3,000円)・一部無罪
出典 裁判資料55号551頁
審級関係
評釈論文
判決理由 〔労働時間-時間外・休日労働-時間外・休日労働の要件〕
 被告人は昭和二十三年七月頃より同年十二月末までの間出雲市(略)に煉瓦工場(A社)を経営し、その事業主として常時B外十五名を雇傭しておつたものであるが、法定の除外事由なくして同年九月二十六日頃より同年十一月十七日頃までの間九回にわたり、右工場に於てC外九名にたいし一日八時間を超える十四時間の労働をなさしめ(別表第二目録参照)て、労働基準法第三十二条第一項、第百十九条第一項第一号に該当する所為をなしたものである、というのである。よつて按ずるに証第一号(出勤簿)を検するとC外九名がそれぞれ起訴の日時に窯焚作業に携わり一日二十時間または十四時間の労働をしたことは、あつたように見えるが、他面弁護人提出の契約書(弁第四号)、出雲労働基準監督署備付のA社取締役D名義の就業規則書、当裁判所における証人Eの証言を綜合してみると、被告人経営の本件工場においては製品(煉瓦)生産工程の特殊性増産意慾の昂揚にかんがみ、昭和二十三年七月以降経営者と労務者との間に賃金はその製品の出来高に応じて支払をするとの契約があり、その旨の就業規則の届出でも前記監督署にいたされておる事実が明らかである。従つて本件の労務者にたいする労働時間の当否についてはむしろ労働基準法第三十二条第一項によらず、同条第二項によつて断ずべきものであるかとの疑いをいだく次第である。
 よつて前敍証第一号(出勤簿)以外に右基準法第三十二条第一項の所謂超過労働事実を明確ならしめる証拠のない本件公訴第一事実は、結局その証明不十分として、刑事訴訟法第三百三十六条にしたがつて無罪の言渡しをする。