全 情 報

ID番号 10341
事件名 労働組合法違反事件/労働基準法違反事件
いわゆる事件名 茨城県貨物自動車事件
争点
事案概要  全員総辞職する旨の発言により、解雇予告がなされなかった場合につき、労基法二〇条違反が成立するか否かが争われた事例(肯定)(最判→否定)。
参照法条 労働基準法20条
労働基準法119条
体系項目 解雇(刑事) / 解雇予告と除外認定
裁判年月日 1948年10月18日
裁判所名 水戸地
裁判形式 判決
事件番号
裁判結果 一部有罪(懲役4か月)・一部無罪
出典 裁判資料26号389頁
審級関係
評釈論文
判決理由 〔解雇-解雇予告と除外認定〕
 被告人は茨木県A株式会社の取締役として同会社の事業を経営していたものであるが、昭和二十三年六月六日同会社水戸出張所従業員B、C等約四十名(別表に記載の者等(省略))が水戸市外Dに会合して協議をとげ、賃金値上その他労働条件の改善に関し会社に対する要求事項を決定し、そのことを会社側を代表する被告人に対し嘆願の形式を以て交渉することとし、同日右会合者のうちE、F、Gの三名が前同出張所従業員Hを訪ね、同人に対し被告人との右交渉を一任したので茲にHは翌同月七日夕刻被告人の肩書居宅において被告人と会見し、前記従業員等が前日Dに集合の上会社に対し賃金値上の要求をなすことを決議した旨を告げ、若しその要求が容れられない場合には集合者全員が辞職すべき旨を附言したところ、被告人は痛く不満の念を抱き右集合者全員に真実辞職の意思ありや否や、又Hにそれ等の者に代り辞職の申入をなす権限ありや否やを特に確むることなくHの右言辞を以て同人が右集合者全員に代り有効に辞職の申入をなしたものであるとなし、殊にその翌同月八日自らB、Iの両名と直接会談した結果同人等にはもとよりその他の者にも何等辞職の意思なく従つてHには全然これらの者に代り辞職の申入をなす権限なかりしことを確知したにも拘らず、同月九日朝水戸市(略)所在前記会社工場内に前記従業員等を集め不当にも同人等に対し、同人等の希望を容れ、その辞職申入を承認する旨を通告し、よつて会社と同人等との間における雇用関係の終りを宣し、以つて天災事変その他法定の事由なく従つて行政官庁の認定も受けず少くとも三十日前の予告をすることもなく又三十日分以上の平均賃料を支払うこともせずに、名を合意解約に藉りB等四十名(別表に記載の者(省略))の従業員を濫りに解雇したものである。(中略)被告人は本件は辞職希望者の希望を容れ、Hのなした全員辞職の申入を認めたもので断じて一方的に解雇したものではないと極力辞疏するけれども前顕G、F、E、Jに対する各検事聴取書中同人等の供述記載によればD集合者に辞職の意思のなかつたこと及びHに対し辞職の申入をなす権限を与えたことのなかつたことを認むるに十分であり又一方においては被告人がHにその権限ありと信ずるにつき正当な理由のあつたことを認むるに足る何等の証左がないばかりでなく…………六月八日夜被告人の居宅においてなされたB、I両名との会談の結果被告人は同人等所謂D組に毛頭辞職の意思のないことを確知した事実を認定するに足りるから被告人の弁疏はこれを排斥する外はない。