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ID番号 10551
事件名 労働基準法違反被告事件
いわゆる事件名 光本営業事件
争点
事案概要  満一八歳に満たない者を福祉に有害な職務に従事せしめたとして使用者が起訴された事例。
参照法条 労働基準法63条2項
労働基準法63条4項
労働基準法119条
体系項目 年少者(刑事) / 福祉に有害な業務
裁判年月日 1956年10月31日
裁判所名 東京高
裁判形式 判決
事件番号 昭和31年 (う) 1624 
裁判結果 破棄・自判
出典 家庭裁判月報8巻10号90頁
審級関係 一審/前橋家/昭31. 4.30/不明
評釈論文
判決理由 〔年少者-福祉に有害な業務〕
 所論に鑑み本件記録を精査して按ずるに、本件労働基準法第六三条第二項違反の罪のうち満一八歳に満たない少年をその福祉に有害な業務に従事せしめる場合その使用者が利益をうけていないということはさして斟酌すべき事情とは認められないことは右法条が所論の如く年少者保護の規定であつて、児童の精神、肉体双方の健全な、成長育成を確保する為のものである点から考えても明瞭である。
 又原判決は被告人は本件少年を雇入れたことにより万余の損害を蒙つている旨判示しているところ、成程被告人の原審公判供述によれば、所謂前借金三五、〇〇〇円の内六、〇〇〇円返還されたのみで、その余は免除したというので、二九、〇〇〇円の損失を蒙つたが如くである。しかし、一方Aの司法警察員に対する供述によれば、同人が被告人方に雇われている期間中には合計約四四、〇〇〇円の稼ぎ高があつたことが認められるので、被告人の右損失を蒙つた旨の原審公判供述はたやすくは信用できないのである。而して被告人はAが満一八歳未満で、芸妓として、酒席に待せしめることのできないものであることを熟知し乍ら雇入れたもので、たとえ右少年の実母等から雇入方を懇願されたからとて遵法精神の欠如するものとの謗は免れない。