全 情 報

ID番号 10572
事件名 労働基準法違反被告事件
いわゆる事件名 旭段ボール事件
争点
事案概要  動力伝導装置の車軸が労働安全衛生規則六三条一項にいう「接触の危険のあるもの」に該当するとされた事例。
参照法条 労働基準法42条
労働安全衛生規則63条1項
労働安全衛生規則69条
体系項目 労働安全衛生法 / 機械・有害物に関する規制 / 機械
裁判年月日 1964年10月28日
裁判所名 東京高
裁判形式 判決
事件番号 昭和39年 (う) 750 
裁判結果 棄却(控訴)
出典 東高刑時報15巻11号209頁
審級関係
評釈論文
判決理由 〔労働安全衛生法-機械・有害物に関する規制-機械〕
 本件の動力伝導装置の車軸は労働安全衛生規則第六三条第一項にいう「接触の危険があるもの」にあたらないと主張するのである。そこで、一件記録を検討し、かつ当審における検証の結果をもあわせて考えてみると、なるほど本件の車軸が工員の一般の通行はもとより平常の作業のためにもまたぐ必要のない場所に設置されていることは所論のとおりこれを認めることができる。しかしながら、たとえば同条第二項が「水平車軸で、作業若しくは通行のためこれをまたぐもの」に限つて覆又は踏切橋の設置を義務づけており、他方において同規則第八〇条が木工用帯のこの盤の刃及び動輪について無条件に囲又は覆の設置を規定しているのに対し、本件で問題になつている第六三条第一項は「接触の危険があるもの」について囲などの設置を命じていることから考えると、同項の車軸については、その存在自体がつねに当然接触による事故発生の危険を伴うものとはいえないので、具体的な状況上接触の危険がある場合にだけ囲などの設置が要求されていると解すべきであるが、他面その危険は、たとえば人が作業又は通行のためこれをまたがなければならない場合のような高度の危険である必要はなく、およそ人がこれに接触するある程度の危険が存することをもつて足りると解すべきである。論旨は、同項にいう車軸は「その上で作業する必要がある区域に架け渡された車軸」と「その下を通る必要ある区域に架け渡された車軸」を指すのだというけれども、右は独自の所論であつて採用することはできない。ところで、本件の車軸は、前述したように作業又は通行のためにこれをまたぐ必要はないし、その他これに接触する危険の度が非常に高かつたとはいえないが、それにしてもその附近でカツターの作業が常時行なわれているのであるし、これに近づこうと思えば自由に近づくことのできる状態にあつたのであり、現に回り道の労を省いてこれをまたごうとしたためこれに接触して事故を起こした従業員もあつたことから判断すると、やはり接触の危険がある程度なかつたとはいえず、右の車軸は同規則第六三条第一項にいう接触の危険がある車軸に該当するものであつたといわなければならない。