全 情 報

ID番号 00062
事件名 賃金請求事件
いわゆる事件名 鈴鹿市事件
争点
事案概要  市が女性職員を昇格させなかったことにつき、性別による差別を禁じた地方公務員法一三条に違反するとして、給与差額相当額及び慰謝料の支払を求めた事例。
参照法条 地方公務員法13条
民法709条
国家賠償法1条
労働基準法4条
体系項目 労基法の基本原則(民事) / 男女同一賃金、同一労働同一賃金
裁判年月日 1980年2月21日
裁判所名 津地
裁判形式 判決
事件番号 昭和47年 (ワ) 83 
裁判結果 一部認容(控訴)
出典 労働民例集31巻1号222頁/時報961号41頁/タイムズ417号130頁/労経速報1041号12頁/労働判例336号20頁
審級関係 控訴審/名古屋高/昭58. 4.28/昭和55年(ネ)112号
評釈論文 奥山明良・判例評論262号53頁/青野覚・労働判例343号10頁/石井宏治・昭和55年行政関係判例解説617頁/中村博・法令解説資料総覧17号203頁/中嶋士元也・ジュリスト737号143頁/中嶋士元也・昭和55年度重要判例解説〔ジュリスト743号〕238頁/林弘子・ジュリスト719号90頁
判決理由  被告市における昭和四六年度以降における昇格制度運用の実態及びその基準、ことに昭和四六年四月一日の昇格に際して、同二・7で認定のとおり男子職員については、基準該当者のうち客観的に昇格不適当と認められる事由を有する者以外の全員につき昇格が実施されていることからみて、前認定の「五等級一六号俸以上の吏員のうち任命権者の認める者」との基準は、男子職員に限って同号俸以上の者で基準に関する規則別表第2所定の在級年数・経験年数の要件を充足している者は、昇格不適当と認められる特段の事由のない限り一律に昇格を認める形で運用されたものと推認できるから、前記二・7で認定した昭和四六年三月当時の五等級一五号俸以上の男女職員の数とその分布状況及びこれと同年四月一日実施による昇格者の分布状況との対比並びに前記二・1で認定した原告の経験年数、在級年数及び五等級二〇号俸という号俸更には《証拠略》により明らかな原告の従前からの担当職務の内容からすれば、右昇格基準が前記地公法一三条の趣旨にしたがい女子職員に対しても男子職員に対してなされたのと同様の形に平等に運用されていたならば、原告は当然昇格対象者とされ、少なくとも五等級二〇号俸の直近上位である四等級一〇号俸に昇格されてしかるべきものであったと推認できる。
 (中 略)
 しかるに、それにもかかわらず原告に対し昇格を実施しなかったのは女性であることにより不当に不利益な取扱いをしたものといわざるをえず、これは1で述べたとおり地公法一三条に違反し違法に原告の有する前記法律上の利益を侵害したこととなる。
 (中 略)
 当時被告市においては考課基準、勤務評定書といったものも作成されておらず評価資料もほとんど口頭によるものという程度であるのみならず、そのいうところはきわめて曖昧であり具体性を欠くものであって、それ自体信憑性に乏しいものであり、また従前から被告市においては女子職員に対し前記二・9・(一)・(四)で認定したような、男女間で職務、能率、技能等に差異のあることが立証できない限り地公法一三条に反するといわれてもやむをえない取扱いをしていたことなどを併せ考えると、性別による差別はなかった旨の右両証人の供述は容易く措信できないものというのほかない。