全 情 報

ID番号 00081
事件名 地位保全仮処分申請事件
いわゆる事件名 東京12チャンネル事件
争点
事案概要  単なる請負関係にすぎないとして委託の打ち切りを受けた放送局のタイトル契約者が、放送局との雇用契約関係の存在を主張し、右打ち切りが労働協約違反、解雇権濫用等にあたり無効であるとして地位保全等求めた仮処分申請事件。(申請認容)
参照法条 民法1条3項,623条,632条
体系項目 労基法の基本原則(民事) / 労働者 / 労働者の概念
労基法の基本原則(民事) / 労働者 / タイトルデザイナー、プログラマー
裁判年月日 1968年10月25日
裁判所名 東京地
裁判形式 判決
事件番号 昭和41年 (ヨ) 2399 
裁判結果
出典 労働民例集19巻5号1335頁/タイムズ228号214頁
審級関係
評釈論文 山口浩一郎・ジュリスト448号125頁/山本吉人・労働法の判例〔ジュリスト増刊〕26頁
判決理由 〔労基法の基本原則(民事)-労働者-タイトルデザイナー、プログラマー〕
 解雇権濫用の主張について言えば、この主張を前述のように、申請人と被申請人との従前の契約関係を終了させることが権利濫用か否かの問題として考える限り、右関係が雇傭であろうと請負であろうと同様に問題となる事柄である。ただ、労働の従属性が強い場合には、労働法の理念からして、被申請人の行為が権利濫用と判断される場合が広くなるにすぎない。このように考えてくると、結局本件では雇傭か請負かが問題なのではなく、申請人の被申請人に対する労働の従属性がどの程度のものであったかが問題なのである。前認定の事実によれば、被申請人は、契約書では「請負」の文字を使用し、賃金はすべて出来高払いとし、夏季および年末一時金の支給は他の従業員に比し非常に低額に抑え、各種保険の取扱いをせず、特に申請人らの入社時には直接契約にすることを嫌って、わざわざ新会社を設立し、いわば間接的な形で契約をし、その後の申請人らの職員化の要求にも応ぜず、昭和四〇年六月二九日の議事確認書では他の従業員と区別して対象から外す(後に詳述する。)など請負的性格を強調しており、申請人らタイトル契約者は、不本意ながらもかかる扱いを甘受してきたし、更に、申請人らタイトル契約者には出勤時刻の定めもなく、出勤簿も作られていないなどの事情もある。
 しかしながら一方、申請人らは建前はともかく、実質的には出社を義務づけられ、相当の時間職場に留ることを要請され、あるいは早番、遅番のシフトを組むなど、被申請人の言葉に即応できる勤務態勢をとることを要求されているほか、割り当てられた仕事を拒否することなく、厚生施設の使用、定期健康診断、源泉徴収等は他の従業員と同一の取扱いをされ、前記のような内容の身分証明書(編注・勤務先を「A財団テレビ事業部」と記載した)も発行されていたのである。これらの事情を併せ考えると、申請人と被申請人との契約は、請負的性格と共に、雇傭的性格―従って従属労働としての性格―をも含んだ一種の混合契約とみうるものであり、その雇傭的性格の範囲内において、なお労働法上の保護をも受けうるものであるというべきである。