全 情 報

ID番号 00084
事件名 給料支払仮処分申請事件
いわゆる事件名 五合化学事件
争点
事案概要  会社により休職処分を受けた取締役工場長が、就業時間中従業員に弁明を試み工場生産を一日滞らせたとして懲戒解雇されたのに対し、右解雇は解雇権濫用にあたり無効であるとして地位保全、休職処分停止等求めた仮処分申請事件。(申請却下)
参照法条 民法623条
労働基準法9条
体系項目 労基法の基本原則(民事) / 労働者 / 取締役・監査役
解雇(民事) / 解雇事由 / 人格的信頼関係
裁判年月日 1970年3月10日
裁判所名 東京地
裁判形式 判決
事件番号 昭和42年 (ヨ) 2340 
裁判結果
出典 タイムズ247号253頁
審級関係
評釈論文
判決理由  〔労基法の基本原則―労働者―取締役・監査役〕                (3)契約の性質
 債権者が取締役会の決議にもとずく代表取締役の指揮命令に従って工場長の労務を提供する点において、債権者と会社との間の契約は労働契約というを妨げない。
 〔解雇―解雇事由―人格的信頼関係〕
 工場長の職務が工場生産の統轄という包括的性格をもちしかも工場長自ら取締役会の一員である点にも着目すれば、この労働契約は、より包括的でない労務の提供を目的とする契約に比して、当事者双方の人格的信頼関係をより重視するものというべきであって、事務処理を旨とする委任契約にも類似する。従って本件懲戒権の行使に裁量を誤った違法があるか否かを判定するに当っては、本件契約のもつこの特性をも考慮しなければならない。
 (中 略)
 債権者の所為は工場長として動機態様において重大であり、その結果会社幹部との反目は決定的となり、もはや債権者と会社との間の人格的信頼関係は乏しく、債権者の従前の功績を考慮してもなおこれとの契約関係を維持することは極めて困難であるといわざるを得ない。従って会社が債権者に対し懲戒処分中最も重い解雇の措置を選択したからとて、これをもってその裁量を誤ったとはいえない。